研究課題/領域番号 |
20K23302
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤江 隼平 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (80882844)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | adropin / 一酸化窒素 / 有酸素性トレーニング / 大腿動脈血管 / 血管内皮機能 / 肥満 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
現在までに中高齢者や肥満者における有酸素性トレーニングにより血中adropin濃度が増大し、その増大は動脈硬化度の低下や血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の血中濃度の増大と関連があることを明らかにした。さらに、動物実験において、有酸素性トレーニングによる血中adropin濃度の増大は動脈血管のadropin遺伝子発現の分泌が影響を及ぼしている可能性やadropinによる血管内皮機能の改善はNO依存的であることを明らかにした。しかしながら、現在までの検討は中心動脈の検討であり、心筋梗塞のリスクが高くなる閉塞性動脈硬化症に対しては大腿動脈における血管内皮機能の低下や血管内腔の閉塞(脂肪沈着)に対する運動効果・分子機序についての検討も必要である。そこで本研究では、adropinが大腿動脈血管に及ぼす生理学的影響の解明を目的とした。 今年度は、肥満および糖尿病を誘発するdb/dbマウス(db/db群)および健常対照群であるdb+/-マウス(control群)を対象に実施した。さらに、その2群を大腿動脈血管にadropinを事前投与する群(adropin群)としない群(vehicle群)に分割し、インスリン誘発性の血管拡張能にadropinが及ぼす影響を薬理学的なミオグラフ法を用いて検討した。その結果、control群におけるインスリン誘発性の血管拡張能は、adropin群およびvehicle群に有意な差は認められなかった。一方、db/db群におけるインスリン誘発性の血管拡張能は、vehicle群と比較してadropin群で有意に高値を示した。 したがって、本研究の結果から、肥満糖尿病モデルマウスにおける大腿動脈血管におけるadropinの事前投与はインスリン誘発性の血管拡張能を改善させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、おおむね達成できていると考えられる。肥満糖尿病モデルマウスの大腿動脈血管におけるインスリン誘発性の血管拡張能にadropinが関与することを明らかにして、adropinの大腿動脈血管における生理学的作用を明確にした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果から、肥満糖尿病モデルマウスの大腿動脈血管におけるadropinの生理学的作用を明らかにした。しかしながら、生体内からadropinを欠損した状態での大腿動脈血管への影響は明らかでないため、今後はadropin遺伝子欠損マウスを用いて、adropinの大腿動脈血管における生理学的貢献度を検討する必要がある。 adropin遺伝子欠損マウスと野生型マウスの大腿動脈の弾性率を比較検討し、その差異に対する分子メカニズムを明らかにする。さらに、運動トレーニングを実施したadropin遺伝子欠損マウスと野生型マウスの血管機能を比較検討することにより、運動トレーニングによる血管機能の改善に対する生体内のadropinの重要性を解明する。
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