研究課題/領域番号 |
20K23308
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
吉里 雄伸 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 助教 (90880857)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 不器用 / 腰背部柔軟性低下 / 前屈時腰痛 / 大腿部後面筋柔軟性低下 / 大腿部前面筋柔軟性増加 / スポーツ時間の増加 / 身長の増加 / 女性 |
研究実績の概要 |
2021年度には、4-15歳の子どもを対象に測定会を実施した。実施内容は、運動の器用さについて評価することができるMovement Assessment Battery for Children-Second Edition(以下、MABC-2)のバランス項目(以下、Balance task)を用いて運動の器用さを定量化した。また、前屈時・後屈時腰痛の有無、運動習慣などはアンケートを用いて収集し、身長・体重、柔軟性(腰背部、大腿後面筋、大腿前面筋)、筋力(握力、膝伸展筋力、背筋持久力)の評価も同時に行なった。さらに荷物の持ち上げ動作をMicrosoft Azure Kinectを用いて撮影し、各関節の協調性の定量化を図った。現在、明らかとなってきた結果を以下に記載する。 【11-15歳の子どもの運動が不器用なことの要因】については、今回MABC-2の中でもBalance taskのみの評価であったが、腰背部の柔軟性低下が有意に影響を与えている因子であると推察された。 【前屈時腰痛発症の因子】は、身長の増加、性別(女性)、腰背部と大腿部後面筋の柔軟性低下、大腿前面筋の柔軟性増加、スポーツ実施時間の増加であった。またこの中でも、腰背部と大腿部後面筋の柔軟性低下、大腿前面筋の柔軟性増加、スポーツ実施時間の増加は有意な影響因子であると考えられた。前屈時腰痛に関しては、運動の不器用さは要因ではないように思われた。 【子どもの大腿部筋柔軟性が低下する年齢】は、大腿部後面筋では男女ともに8-9歳、大腿部前面筋では男児10-11歳、女児12-13歳であると考えられた。 これらの結果は、運動が不器用な子どもや前屈時腰痛を保有する子どもへの介入および予防に対し、改善すべき点として有益な情報になり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2年間で計画していた研究であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)拡大を受け、測定の実施時期が遅延した。しかし、概ね予定通り測定を実施し、現在統計解析を進め、国際学会1本、国内学会2本の演題登録を行なっている。 本研究の計画書においては、子どもにおいて多発する腰椎分離症を念頭に置き、その目安となり得る後屈時腰痛のみの要因分析を行う予定であった。しかし、腰椎椎間板の変性が15歳までに起こることにより腰痛の再発率が高まるという先行研究を元に、腰椎椎間板性腰痛の目安となる前屈時腰痛も調査対象に含めて調査を行なった。また、研究対象者を11-15歳の子どもとしていたが、対象範囲を4-15歳に拡大して測定会を実施した。それにより前屈時腰痛の発症要因や子どもの大腿部筋柔軟性が低下する時期について明らかにすることができており、当初の予定より多くの結果が得られている。 今後は、後屈時腰痛の要因分析、また荷物の持ち上げ動作の解析を進め、学会での発表や論文投稿を行うことで情報発信を行なっていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実施の概要】で記載した内容は、現在国際学会1本、国内の学会に2本を投稿中である。今後も統計解析を進め、結果を学会及び論文投稿を介して情報発信していく。 今回、研究の変更点として、MABC-2の全ての項目のうち、手指の器用さや投球・捕球の項目に関しては実施ができなかった。現在、新たに測定の実施を計画中である。 さらに、今回の研究において、腰背部の柔軟性低下が運動不器用の要因になり、大腿部後面筋の柔軟性の低下や大腿部後面筋と前面筋の筋緊張のimbalanceが前屈時腰痛の要因になると示唆された。これは成長による柔軟性の変化が影響を及ぼしている可能性が示唆される。今後、2021年度に測定を実施した施設において、2022年度も引き続き測定を予定している。縦断的に測定を行なっていくことで、柔軟性の変化と運動の不器用さ及び腰痛症発症との関連について、さらに明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響により測定会の実施時期が遅延したため,2021年度において学会発表や論文の投稿ができなかった.また,2022年度にも縦断的な測定を予定しているため,2021年度の使用額を少なくした. 2022年度は,学会発表・論文投稿に経費を使用していく予定である.また,縦断的な測定実施が可能であるため,測定の費用に使用を予定している.
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