研究実績の概要 |
本研究の目的は,がん分子標的薬の最適用量を探索するための新たなベイズ流用量探索法を開発することである.がん分子標的薬は,用量の増加に伴って有効性が単調に増加しない可能性があるため,最適用量を特定するためには,用量-有効性関係を考慮して用量探索を行う必要がある.統計モデルを用いて用量-有効性関係を考慮した用量探索法はいくつか提案されているが,薬剤開発の初期に実施される用量探索試験では用量-有効性関係に関する情報が乏しく,症例数も限られているため,統計モデル選択の不確実性が課題として挙げられる. このような背景のもと,本年度は,change-point modelと呼ばれる統計モデルを用いてがん分子標的薬の用量-有効性関係を考慮した既存の用量探索法 (Sato, Hirakawa, and Hamada, Statistics in Medicine 2016) を基に,ベイズ流モデル平均化の枠組みを導入することにより,統計モデル選択の不確実性を考慮した新たなベイズ流用量探索法 (提案法) を開発した.がん用量探索試験は小規模であり,候補となる統計モデルの数が多い場合に統計モデル選択の不確実性が増加することが懸念される.そのため,提案法の用量探索アルゴリズムには,試験途中で得られた有効性及び毒性に関するデータに基づき,候補となる統計モデルを絞り込む手順を組み込んでいる.提案法の性能を評価するため,様々な用量-有効性関係を仮定したシミュレーション実験により,既存のがん分子標的薬の用量探索法との性能比較を行い,現在,論文にまとめている.
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