本研究では,半球面ディスプレイによる全天周映像表示を行う遠隔通信システムの開発を通し,全天周映像が人間の知覚と遠隔通信に与える影響を研究する.球面・半球面ディスプレイと全天周カメラの組合せにより,全天周映像の映像全体を表示し,同時に正しい方向情報での表示を行うことで,既存の問題解決を試みた. 今年度は,全天周映像を用いた遠隔操作に関する問題解決を試み,半球面(お椀型)ディスプレイを用いて,遠隔介助者と車椅子使用者を繋ぐ,遠隔操作・遠隔コミュニケーションシステムを提案した.具体的には,遠隔操作可能な電気車椅子に全天周カメラを装着し,得られた全天周映像をリアルタイムで遠隔介助者にストリーミングする.遠隔介助者は半球面ディスプレイで全天周映像を観察することで,遠隔にいる車椅子の周囲の映像を方向情報を崩すことなく観察可能となる.また,ストリーミングされる全天周映像から車椅子使用者の顔の方向をリアルタイムで検出し,車椅子使用者の観察箇所を可視化することで,操作中のコミュニケーション支援を行った.さらに,車椅子使用者と遠隔介助者だけでなく,車椅子周囲にいる第3者も含めたコミュニケーションが図れるよう,車椅子側には球面ディスプレイを実装し,遠隔介助者の顔や顔の方向情報をリアルタイムで表示した. これらの提案手法について,車椅子使用者と介助者に対してインタビューを行い,提案システムのデザイン考察と応用例を議論し,有用性を検証した.以上の内容を論文にまとめ,査読付きの国内学会と国際学会で発表を行った.
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