本研究は乱数生成手法の中でも暗号学的に安全性が証明されているBlum-Micali(BM)法に着目し,その数学的構造を見直すことで並列化を検討するものである.初年度はGauss周期と呼ばれる有限体上での周期性に着目し,BM法を並列化した生成アルゴリズムの開発と次年度に向けたパラメータの探索方法などについて検討を実施した. 2年目には提案したアルゴリズムをC++言語およびNTLにより実装し,計算機上での乱数生成と乱数性評価に関して以下の研究を実施した. 1)実用的なパラメータの探索方法に関する検討:提案法は有限体上の離散対数問題をベースとして安全性を証明することができ,その制御パラメータは有限体を定義するための素数r,Gauss周期を構成するための素数p,並列度を制御するための任意の整数mである.これらのうち,rは非常に大きな値でなければならないが,mと互いに依存関係があり,r,mからGauss周期に関するもう1つのパラメータを別途導出する必要がある.2年目では,まずパラメータの特徴を解析し,素因数分解法を取り入れることでパラメータ探索処理を自動化した. 2)統計的乱数性評価:本研究では数学的安全性を証明するとともに実用化を目指した評価を実施することも目的の一つとしており,1)で実現した実用的なパラメータを用いた乱数性の評価を実施した.具体的に,まずは米国国立標準技術研究所が提供する統計的乱数検定ツールにより生成した乱数の評価を実施し,すべての検定項目に対して十分な統計的乱数性を示していることを確認した.次に,識別不能性という概念に着目し,提案手法と物理乱数の比較を行ったが,明確な区別が容易でないと考えられ,良い乱数性を有するものであると考えている.また,物理乱数を発生させる過程でも新たな知見を得ることができ,論文として発表を行った.
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