研究課題/領域番号 |
20K23329
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
栗原 淳 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (10577399)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | エッジコンピューティング / 秘匿検索 / リソース認可 / プライバシ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、エッジコンピューティングアーキテクチャにおいて、計算リソースの保護およびユーザの計算依頼の匿名化を検討することである。当初は、Named-Data Networking (NDN) アーキテクチャ上で検討を進めることとしていたが、基礎となるアーキテクチャに依存しない形で、エッジコンピューティングにおけるリソース保護・匿名性の検討を進めることと変更した。これは、そもそもモバイルネットワークやインターネットにおける検討であっても、現在は計算リソース保護や匿名性などの検討がなされていないため、ベースアーキテクチャに囚われず、一般的な手法を確立することで、広く研究成果を応用・適用できるためである。 上記を踏まえ、本課題の初年度では、以下の2つを主として検討した。 ・エッジコンピューティングにおける匿名性担保を目的とし、「どんな計算結果を所望しているのかエッジノードへ秘密のまま取得するプライバシ保護技術」の検討である。特に、符号理論を応用した秘匿検索技術を応用するというアプローチについて検討した。結果として、エッジノードに情報を破壊や盗聴を試みる攻撃者がいたとしても、プライバシ保護を可能とする、理論限界値とその達成手法を明らかにした。 ・エッジコンピューティングにおけるリソース保護を目的とし、「(IDを有しない匿名の)認可トークンを用いた、計算リソースの利用認可手法」の検討である。ここでは、OAuth2.0等、認可トークンを用いた認可技術を前提としている。既存の認可手法を拡張・応用し、複数のAS (Autonomus System) やエッジノード提供事業者、およびサービス提供者をまたがってトークンをやり取りし、リソース管理するための初期検討を行った。そして、エッジノードやサービスの提供形態に応じて、効率的にリソース管理・保護するための認可フローが異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、エッジコンピューティングのベースアーキテクチャを制限しないように変更し、当初予定よりももっと基礎的・一般的な技術を検討することとした。このため、より基礎部分の調査に時間が必要かと思われたが、リソース保護・匿名化の2つの柱に分割してそれぞれ検討を進めることで、それぞれのトピックにおいて効率的に基礎検討を行うことができた。結果として、主著・共著で複数の学会および雑誌発表を、想定通りのペースでに実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、エッジコンピューティングのシナリオへ実際に適用するための、実装を考えた技術開発を行う。そのために概要に記載した2つのアプローチに分割して検討することを継続し、次のような検討を実施する。 ・エッジコンピューティングにおける匿名性担保について、秘匿検索の実装技術の検討を検討する。一方で、秘匿検索以外の技術(e.g., 匿名プロキシを挟んだデータ取得など) についても検討し、より実装に適した手法を模索する。 ・リソース保護を目的としたエッジノードのリソース利用認可手法については、既存のエッジリソースの利用フローとの統合を模索する。特に、エッジコンピューティングで検討されている、リソース発見手法と、本件で検討しているトークンベースのリソース認可手法とを統合し、利用可能なリソース発見と同時に認可を実行可能とする、効率的な実装方法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた学会参加が全てオンライン参加となったため、必要な費用が圧縮された。この圧縮分はより円滑な研究実施のため、追加の実験用サーバPCの購入、および実験用バーチャルプライベートサーバのレンタル費用への充当を計画している。
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