研究課題/領域番号 |
20K23338
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
熊谷 幸汰 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 助教 (90879628)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ボリュメトリックディスプレイ / 空中ディスプレイ / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
本研究課題は,フェムト秒レーザー励起ボクセルの再結像を用いた描画空間と視認空間の分離に基づく,色表現可能な空中ボリュメトリックディスプレイの実現を目標としている.2020年度は,2つの放物面鏡と液晶カラーフィルタから構成される再結像システムの作製およびボリュメトリックディスプレイへの適用を行い,色表現可能な空中ボクセルの生成に対する提案手法の有効性を評価した.再結像システムは,可視領域を網羅するフェムト秒レーザー励起空中ボクセルの発光色から,任意色を抽出可能にすることが確認された.さらに,描画対象に設定した色情報を有する3Dモデルデータから,ボクセルの最適な描画経路を算出する手法を実装した.算出された描画経路を,ディスプレイシステムを構成するビーム走査光学系と液晶カラーフィルタに与えるソフトウェアを構築することで,ボクセル単位で発光色を変化できる空中体積映像を実証した.以上の成果は,国内外における学会を通して発表された. 一方で,映像サイズを拡大するためにディスプレイ光学系を変更した際,ボクセルを生成するための対物レンズの焦点距離を長くする必要性が生じ,再結像された空中ボクセルを視認できる充分な輝度で得られないことが明らかとなった.これは,次年度において考慮すべき新たな視点として加え,空気よりも少ないパルスエネルギーでボクセルを生成できる励起材料選択と,描画空間への充填のなかで対応していきたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の取り組みでは,再結像システムの作製と,これを適用したボリュメトリックディスプレイの構築を終えた.さらに,色情報を有する3D映像データから走査経路を算出するアルゴリズムと,映像描画ソフトウェアを作製することで,体積映像のカラー化に対する本提案の有効性を実証した.これらの成果は,本研究課題における本年度の取り組みで期待していた成果とおおむね合致している.映像サイズを拡大するための実験光学系を構築した際,視認できるほどのボクセル輝度を十分に得られないことが明らかとなったが,次年度の活動で計画していた励起対象の選定により対応できると考える.以上の状況を鑑みるに,本研究課題はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては,空中体積映像のサイズ拡大および輝度向上を達成するために,光学系の改善と空気よりも少ないパルスエネルギーでボクセルを生成できる励起対象の探索および描画空間への充填を行い,空中ボクセルとの比較評価を実施する.現在,ガス材料に着目し,評価を開始するための材料調達と実験光学系の構築を完了している.映像サイズが拡大された場合,体積映像を形成するボクセル数の不足が想定される.これは,計算機ホログラムを用いた空間光制御により,同時に生成できるボクセル数の増加と,この多点同時生成ボクセルを考慮した最適な描画経路を算出するソフトウェアを実装することで解決を試みていく.これらの推進方策に基づく活動を通して,次年度の成果としては,センチメートルオーダーのカラー化された空中体積映像の実現と,映像とのインタラクション表現の実装を目指す.また,得られた成果を国内および国際会議での発表や論文投稿を通して積極的に発信していく.
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