ボリュメトリックディスプレイは,体積的画素を実空間に生成することで,裸眼で観察できる広視野な3次元映像表示を可能にする技術であり,仮想空間と実空間を繋ぐ未来社会へ向けて,映像コンテンツの多様化に対応する新たな映像インタフェースとして期待される.本研究課題は,フェムト秒レーザー励起ボクセルの再結像を用いた描画空間と視認空間の分離に基づく,色表現可能な空中ボリュメトリックディスプレイの実現を目的とした.2020年度は,ふたつの放物面鏡と液晶カラーフィルタから構成される再結像システムの作製およびボリュメトリックディスプレイへの適用を行い,空中ボクセルの色表現に対するシステムの有効性を検証した.このシステムは,可視領域を網羅するフェムト秒レーザー励起空中ボクセルの発光色から,任意色を抽出可能にすることが実証された.一方で,再結像システムの光透過率の問題と,映像サイズを拡大するために長い焦点距離のレンズを利用することから,再結像された空中ボクセルを視認できる充分な輝度で得られないことが明らかとなった.そこで2021年度は,色表現可能かつ空中体積映像のサイズ拡大と輝度向上を達成するために,空気よりも少ないパルスエネルギーでボクセルを生成できるキセノンガスを励起対象として,ボクセルの評価とディスプレイシステムへの適用を実施した.キセノンガス中のボクセルは,空気がボクセル形成を始めるレーザーパルスエネルギーにおいて,およそ200倍の明るさで生成されることが確認された.結果として本研究は,色表現可能な体積映像映像をミリメートルオーダーからセンチメートルオーダーへのサイズ拡大とともに実現した.これらの研究成果は,国内外の学会で発表され,さらに学術論文誌Scientific Reportsにて発表された.
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