研究課題/領域番号 |
20K23339
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
船水 章大 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (20724397)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 強化学習 / 機械学習 / マウス / 光遺伝学 / 光計測 |
研究実績の概要 |
ヒトや動物は,過去の経験から習慣的に行動を決めるだけではない.与えられた感覚情報と経験から,現在の状況を推定し,目的志向的に柔軟に行動を決定する.この目的志向行動は,工学分野ではモデルベース戦略に分類される.モデルベース戦略の神経基盤の解明に向けて,初年度の6か月では,マウスの行動実験課題を開発した.この行動実験では,頭部を固定したマウスをトレッドミル上に設置した.マウスは,音の周波数に応じて左右のスパウトを舐めることで,報酬のスクロース水を得た.同課題では,現在の試行での音周波数が,直前試行の音周波数に依存する.音周波数の試行間での遷移確率をpとすると,pが0.8の場合,音周波数が各試行で高確率で切り替わる.この場合,直前の経験に基づいて行動を決定するモデルフリー戦略では,行動を最適化できない.モデルベース戦略で状態遷移を推定し,行動を決定する必要がある.本研究は,この状態遷移の行動課題をマウスで実施した.まず,マウスは音周波数に応じて左右のスパウトを舐め分けた.また,遷移確率pに応じて,行動をバイアスさせることがわかった.具体的には,直前に左スパウトで報酬を得た場合,次の試行では右を選択する頻度が上昇した.この結果は,マウスはモデルベース戦略で行動を適切に変化させることを示唆する.また,次年度の神経活動操作に向けて,光遺伝学用のレーザー走査型顕微鏡を構築中である.同顕微鏡は,2つのガルバノミラーを操作することで,青色レーザーを所望な脳領野に照射できる.抑制性細胞にChR2を発現したマウスを用いることで,背側皮質の任意の領野を,任意の時刻に抑制できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の主宰する研究室は2020年3月に始まった.研究活動スタート支援での研究実施の約6か月で行動実験装置を構築した.この装置でマウスの行動実験課題を新規に開発し,所望の行動を得ることができた.ただし,昨今の難しい状況により,アメリカからの遺伝子組み換えマウスの取得が遅れた.そのため,神経活動操作等の実験セットアップが遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
複数のマウスでモデルベース行動を観測できるように状態遷移の行動課題を洗練させる.野生型マウスで行動課題を実施後,遺伝子組み換えマウスでも同課題を実施する.光遺伝学による行動課題中の神経活動操作で,モデルベース行動を司る領野の同定を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨今の難しい状況により,アメリカからの遺伝子組み換えマウスの取得が遅れた.そのため,神経活動操作等の実験セットアップが遅れた.このセットアップ費用の一部を翌年に繰り越した.2020年度からの繰り越し費用も含めて,2021年度に神経活動操作のセットアップと実験を実施する.
|