研究実績の概要 |
2020年度は、交付申請書内の研究の目的に記載した一つ目の目的「統計力学の解析手法を用いて量子機械学習の性能を理論的に評価し、量子ゆらぎの導入が機械学習に与える影響を明らかにする。」に取り組んだ。本研究では、通常の機械学習で用いられる基礎モデルであるボルツマンマシンを拡張した量子機械学習モデル、量子ボルツマンマシン [Amin et al., 2018] を解析の対象とした。Suzuki--Trotter decomposition [Suzuki, 1976] [Trotter, 1959] を利用して量子ボルツマンマシンを統計力学の土俵で扱えるように変換し、統計力学由来の手法であるレプリカ法 [Mezard et al., 1987] を用いて、特定の問題設定における量子ボルツマンマシンの変数の期待値のふるまいについての解析の一部を行った。この解析は計画通りに進行しているものの、数値計算などについては完了してはいないため、2021年度の前半にこの理論解析に引き続き取り組み、本研究課題の実施期間中に結果のまとめを行い、投稿論文を準備する予定である。 また、本研究の当初の計画には含まれていなかったが、2020年度に関連研究が増加してきた量子機械学習モデルの敵対的攻撃に対する脆弱性についての研究も開始している。これは量子機械学習の実応用を考えるにあたり明らかにしなければならないテーマの一つであり、本研究の当初の計画の内容と密接に関連している。こちらの研究は2021年度から採択された別の研究課題と連携しつつ、本研究課題においては理論面を中心に引き続き進める予定である。
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