本研究では,集団を同時に相手取る機能を持たせた複数ロボット議論システムを用いて,納得感の高い集団推薦を実現することを目的としている.2020年度は,多様な観点を含む選好モデルの構築について取り組んだ.また,複数台の対話ロボットを用いて,複数の観点を含む選好モデルが,一定程度の対話体験を提供できることを実証実験で示してきた.2021年度は,2名を相手に推薦を行う対話ロボットの開発と効果の検証に取り組んだ. ロボットの機能に関わる研究開発として,複数人の対話相手を同時に相手取る対話戦略の開発について取り組んだ.2名を相手に選好や経験について質問し続け,回答から推定された選好に基づき,アイテムの推薦ができる対話ロボットシステムを構築した.来場者と対話した内容に基づき,来場者に画像を推薦し,それを背景に来場者と記念撮影し,印刷した写真シールをプレゼントする対話ができる対話ロボットを商業施設に設置した.対話相手を2人の来場者にするか,1人の来場者と1台の別のロボットとするか,1人の来場者とするかを変え,また両方あるいはいずれかの選好に基づいて推薦するかを変え,推薦成功率や対話ロボットの印象に与える効果を検証した.その結果,2名の意見に基づいて推薦したほうが,推薦成功率や納得感が有意に高まることを確認した.これらの成果は,推薦するうえで,集団の性質をうまく利用することの重要性を示しており,今後の推薦ロボットがとるべき対話戦略の重要な設計指針となりうる.
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