研究課題
本研究は,Velvet Hand Illusionで生起する感覚が,刺激の組み合わせの統合によりどのように変化するのかを解明することを目標とする.その手法として,Gestaltのプレグナンツの法則のフレームワークを使用する.令和2年度は,装置開発,心理物理学実験による触覚のGestaltの定式化,脳機能計測の調査を進めたのでその概要について説明する.(1)装置開発:温冷感刺激を可能とする触覚ディスプレイの開発のところまで研究を進めた.その方式として,温水・冷水を循環させるシステムを開発した.この研究成果は,令和3年度の日本機械学会年次大会で発表する予定である.(2)触覚のGestaltの定式化:皮膚に加わる物理刺激とそれに伴い生起する錯覚の関係をGestaltの枠組みを使って定式化した.この研究では,視覚・聴覚とは異なる触覚ならではの伸縮の要因と平行移動の要因という新たな要因をプレグナンツの要因の一部として提案することで,錯覚の心理量と物理量を繋ぐ法則の定式化を行った.この研究成果を雑誌論文として投稿した.(3)脳機能計測:開発装置で錯覚が生起するのか否かを確認するため,脳機能計測のプレ実験をNIRS(近赤外分光法)を用いて実施した.過去のfMRIの研究により,VHIの強度に応じて左体性感覚野の特定の領域の賦活が線形に増加することが明らかにされているため,NIRSでその神経活動の様子を計測可能か否かを調査した.実験参加者5名で実験を実施した.被験者の中には,VHIの生起に応じて左体性感覚野の賦活が確認されるものもいたが,一方殆ど賦活しないものもいた.このような被験者間の計測結果の差がどのような要因に起因するのかを解明し,令和3年度に行う本実験に改良を加える予定である.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にあった開発装置の性能評価の心理物理学実験はできなかったが,その一方で今後の研究を円滑に進めるための実験環境の構築や,令和3年度に予定していた脳機能計測の一部を実施し解析を進めるなど,一部予定を変更した.また,触覚のGestaltの定式化に関しては一報論文を投稿することが出来た.従って,全体的にはおおむね順調に進んでいるといえる.
令和2年度に開発した触覚ディスプレイの性能調査を行う.また,令和2年度に行った脳機能計測で,錯覚以外で被験者の脳活動に影響を与えていた要因を排除するため,新たな実験計画を計画し実施する.
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (4件)
Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing
巻: 14 ページ: 1-8
10.1299/jamdsm.2020jamdsm0088
https://orcid.org/0000-0001-7540-9810
https://hirakukomura.xyz/publications/
https://www.researchgate.net/profile/Hiraku-Komura
https://hyokadb02.jimu.kyutech.ac.jp/html/100001322_ja.html