研究課題/領域番号 |
20K23353
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 第二言語コミュニケーション / サービス指向対話シナリオ / オーサリングシステム |
研究実績の概要 |
本研究では,次の3つのサブ目標を設定して研究を推進する. 目標1: シナリオ設計者にとって負担が少ない概念レベルでの会話シナリオ記述の仕組み と計算機による実行可能なシナリオ生成の仕組みの開発 目標2:学習者の情況に則した適応的会話シナリオの導入を半自動化する仕組みの実現 目標3:教育現場におけるシステム運用により,組み入れた機能の評価を実証的に検証 上記の目標①,②に関しては,学習者の習熟度や意欲を想定した制御フロー設計をシナリオ設計者に求めることなく,会話ドメイン制約の規定(サービスの具体化)に注力するだけで,基本的なものから多様なサービスを内包する複雑な制御フローをも含んだ会話シナリオを網羅的に生成する機構を実現している.シナリオ構成エンジンはサービスタスク構造モデルに基づいて規定されているため汎用性を備えつつ,生成した会話シナリオについても第二言語学習の観点から捉えた複雑性(難易度)を判定可能な仕組みとなっている.さらに,サービスタスクに依存しない一般的な「方式」概念(例えば,後払い方式/前払い方式など)を指定することにより,さまざまな会話シナリオ制御を可能とする柔軟な仕組みともなっている.また,提案システムの有効性を確認するため初期評価実験を実施した.その結果,提案仕組みを用いることで,シナリオデザインの負荷が軽減され,またシステムによって生成されるシナリオの網羅性に関する知見が得られた.この研究成果をまとめ,2021年3月に開催された人工知能学会 第91回 先進的学習科学と工学研究会(ALST)で発表し, 研究会優秀賞に選出されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに教材(会話シナリオ)開発のためのオーサリングシステム開発及び初期的評価実験に取り組んだ. 会話シナリオの仕様をシナリオ設計者にとって負担が少ない概念レベルで記述可能とし,それをもとにサービス領域のさまざまな会話シナリオを半自動生成できる汎用的な会話シナリオ教材構築環境を実現した.上述した通り,この研究成果は2020年度人工知能学会・研究会優秀賞に至っている.これは,第二言語によるソフトウェアエージェントとの会話経験の場を教育現場に展開するとともに,情意的な意欲向上に関する学術的知見を積み上げていく上で本研究はその基礎となり,学習支援システム研究のみならずHCI,オントロジー工学,第二言語教育学,認知科学などの周辺領域にも波及性を有する有望な成果であると評価されたことを意味する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,教育現場におけるシステムの運用に向けて,提案システムの洗練を行うとともに,第二言語習得論を専門とする現場の講師の協力の下で,授業実践の調査を実施する.これを通して,現場の人の観点からオーサリングシステムに組み入れた機能の評価を実証的に検証し,会話シナリオ教材の問題点を分析・改善を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,2020年度は国際学会への海外渡航費を計上していたが,学会のオンライン主催等により,未使用額が生じた. 2021年度は教育現場でのシステム運用に向けて,提案システムの洗練・基盤強化が必要だと考える.その開発補助及び事前調査の協力として謝金を計上する.また,現在準備中の論文の校正費と国内外学会参加費に支出予定である.
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