研究課題/領域番号 |
20K23354
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
淺野 祐太 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 特任研究員 (70884675)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / 分光 / 形状推定 / 水中 |
研究実績の概要 |
海底の形状や深度、海洋生物の3Dデータを取得する方法は、海中や水産資源を調査する上で最も重要な技術の一つである。従来の形状推定手法には、仮定や制限が多数存在するため、色情報に関する特徴量の少ない海底や、特殊な反射特性を有する海洋生物の3Dデータ情報を取得することは難しい。さらに、海中で発生する光の吸収・散乱・屈折現象による影響で、高分解能かつ鮮明なセンシングを行うことは困難である。本研究では、光の物理現象による影響を除去するのではなく、波長方向の光の吸収・散乱・屈折現象の差異情報を活用し、水中における光の物理特性そのものを3Dデータや物性、環境情報を取得するための手掛かりとして扱うことで、対象の詳細な3Dデータを非破壊・非侵襲・非接触でリアルタイムに取得可能な技術の開発を目的とする。本年度は、水面で発生する光の屈折現象における波長方向の特性の差異を特徴量として活用した水中の深度推定手法を開発した。空気中から水中を分光カメラで撮影した場合、長波長側の分光画像よりも短波長側の分光画像の方がより歪んでいるように見える。これは、長波長の光に比べ、短波長の光の方が水の屈折率が大きいことが原因である。空気に対する水の相対屈折率は光の波長により異なるため、空気中では同一の光路を辿る光も、波長に依存して水中の光路は大きく異なる。さらに、波長に依存した光路の差異は、屈折が生じる水面の法線方向や水中の深度に大きく依存する。そこで、光の波長と屈折率の関係性を活用し、可視光内の3波長の分光画像の空間的な特徴量から探索した対応点における波長間の光路の差異を算出することで、水面の法線方向と深度を同時に推定可能なアルゴリズムを開発した。シミュレーション画像および実際に水中を撮影した画像から水面の法線マップと水中の深度マップを推定可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、水中を対象とした深度推定を行うための特徴量として、光の波長依存性に関する物理特性を解析し、光の屈折特性を活用した深度推定アルゴリズムを開発できたことから、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた成果を元に、水中の深度推定をより精度良く、簡易に行うために活用可能な光の波長依存性に関する物理特性の画像解析を進める。特に波長方向の光の吸収・屈折・散乱情報の差異を特徴量として組み合わせる方法を検討する。また、光の波長依存性に加え、光の偏光情報を活用するために分光画像と偏光画像の同時活用を試みる。最後に、開発した深度推定手法専用のイメージングシステムの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で提案手法の撮影実験の実施が予定より遅れたため、イメージングシステムを構築するために必要な光学治具を購入できなかった。次年度に必要な光学治具を購入する。
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