研究課題
海底の形状や海洋生物の3Dデータを取得する方法は、海中や水産資源を調査する上で最も重要な技術の一つである。従来の形状推定手法には、仮定や制限が多数存在するため、色情報に関する特徴量の少ない海底や、特殊な反射特性を有する海洋生物の3Dデータ情報を取得することは難しい。さらに、海中で発生する光の吸収・散乱・屈折現象による影響で、高分解能かつ鮮明なセンシングを行うことは困難である。本研究では、光の物理現象による影響自体を深度推定のための手掛かりとして扱うことで、対象の詳細な3Dデータを非破壊・非侵襲・非接触で取得可能な技術の実現を目指した。水中環境でテクスチャ情報が少ない対象の深度測定を行うために、水による近赤外線光の減衰をテクスチャの代わりの特徴としてステレオマッチングを行うアルゴリズムを開発した。特定の波長の近赤外線光を撮影することが可能なステレオカメラシステムを構築し、水中の対象物の深度マップを推定可能であることを確認した。また、空気中から水中を分光カメラで撮影した場合、長波長側よりも短波長側の分光画像の方が水面で発生する屈折による歪み方が大きい。この波長に依存した歪み方を特徴量として活用することで、水面の法線マップおよび水中の深度マップを同時推定可能なアルゴリズムを開発した。さらに、水分により光が吸収・散乱される特徴を応用し、悪天候時の空気中で発生する近赤外線の減衰を特徴量として活用した都市部の深度推定手法を考案した。悪天候時は、空気中の霧などによる光の吸収・散乱の影響で視認性が悪い。そこで、近赤外線領域の3波長画像を用いて、測定対象の反射スペクトルを線形近似した上で、大気中の視程情報を考慮した距離推定アルゴリズムを開発した。実際に撮影した3波長の近赤外線画像から、都市部の深度マップを推定可能であることを確認した。
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Infrared Physics & Technology
巻: 128 ページ: 104507~104507
10.1016/j.infrared.2022.104507