昨年度までに作成したバイオマス発電所のデータに、熱利用を含めた事業所のデータも加えて最終エネルギー消費量を算出し、独自のデータベースを作成した。事業所のエネルギー投入から排熱量を推算し、温度別の排熱量を整理した。また、バイオマスを利用した事業所が所在する自治体の最終エネルギー消費を、活動量指標を用いて都道府県の最終エネルギー消費から按分することで求めた。さらに燃料種、産業種ごとに需要温度帯の分布の情報を最終エネルギー消費の情報に追加し、熱融通技術の対象となるボイラ蒸気による低温熱需要量を定量化した。バイオマス由来の高温の排熱を蓄熱し、より低温の産業低温熱需要に熱融通システムにより熱を供給することを想定し、排熱量に蓄熱融通システムの数値解析で算出した蓄熱効率、出熱効率を乗ずることでバイオマスを利用した事業所が所在する自治体それぞれにおける排熱回収ポテンシャルを算出した。 バイオマスを利用した事業所由来の排熱を蒸気需要に充当した場合、最大で40%の排熱を熱需要に充当することが可能な自治体がある一方、ほとんどの自治体では有効利用率は1%程度となった。また、熱需要全体におけるバイオマス由来の熱の充当率は最大で50%となる自治体も存在するが、平均では3%程度となった。さらに前年度までに確立したコストモデルを用いて、自治体内での熱融通のLCOE(Levelized Cost of Energy)を算出した。その結果、バイオマス由来のLCOEが10円/kWhを下回る自治体は約170あることがわかり、熱融通システムの先行導入先の候補として選定した。出熱側では現在ボイラ蒸気を吸着材に吸着させて増熱するプロセスを採用しているが、低温熱需要の中でも乾燥プロセスでは排湿潤空気を出熱の吸着用に再利用できるため出熱効率を大幅に向上でき、排熱回収ポテンシャルは大きく増大する可能性があることが分かった。
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