研究課題/領域番号 |
20K23366
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
砂谷 優実 金沢医科大学, 医学部, 講師 (70581057)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | アポトーシス |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに、アポトーシス時にカスパーゼにより切断されたDNA損傷修復タンパク質53BP1C末断片が細胞表層にクロマチン断片と共に露出すること、および53BP1-クロマチンの出現が食細胞によるアポトーシス細胞貪食を促進することを培養細胞実験により見出している。本研究では、アポトーシス細胞貪食と貪食後の食細胞における免疫応答に対して、53BP1-クロマチンが自己抗体産生を抑える自己免疫抑制因子として働くのではないかと予想し、53BP1ノックアウトマウスおよびその初代培養細胞を用いて検証することとした。 本年度は、新型コロナウイルス感染拡大により動物実験施設の使用縮小時期が生じた影響で、ノックアウトマウスを用いた実験を次年度に、野生型マウスおよびその初代培養細胞あるいは株化細胞を用いた実験を本年度に行うよう、当初の計画を変更した。その上で、以下の検証に着手した。 A.53BP1欠損アポトーシス細胞は貪食されにくいか、B.53BP1欠損アポトーシス細胞を貪食した食細胞では自己免疫抑制シグナルである炎症抑制性サイトカイン産生が低下するか、C.A.およびB.が53BP1とヒストンの結合依存性であるか C.を行うにあたり、53BP1欠損アポトーシス細胞にヒストン結合変異53BP1を強制発現させる必要があるが、マウス初代培養細胞への遺伝子導入法による強制発現は非常に困難であることが判明した。そこで、代替策として野生型マウスの株化細胞を用いて実験を実施し、in vivoおよびex vivoアポトーシス細胞貪食解析系の再樹立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大防止策のため、当初予定していた53BP1ノックアウトマウス繁殖維持を縮小せざるを得ない状況が一時期生じた。さらに、初代培養細胞への遺伝子導入法による変異53BP1タンパク質強制発現が非常に困難であることが判明した。以上2点の予期しない事態により、当初計画していた実施順を修正し、野生型マウス個体および野生型マウス由来株化細胞を用いてin vivoおよびex vivoアポトーシス細胞貪食実験系を改めて樹立する方針に切り替えた。その結果、野生型マウスおよび野生型マウス由来株細胞を用いたin vivoおよびex vivoアポトーシス細胞貪食実験系を確立させた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の遅れを取り戻すため、令和3年度では、再樹立したアポトーシス細胞貪食実験系に53BP1ノックアウトマウスを適用させて、以下を明らかにする。 A.53BP1欠損アポトーシス細胞は貪食されにくいか B.53BP1欠損アポトーシス細胞を貪食した食細胞では自己免疫抑制シグナルである炎症抑制性サイトカイン産生が低下するか C.A.およびB.が53BP1とヒストンの結合依存性であるか
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、53BP1ノックアウトマウスの使用予定を次年度に変更した。そのため、53BP1ノックアウトマウス分の個体復元費、繁殖維持費、遺伝子型検査費、53BP1ノックアウトマウスを用いた全ての生化学的実験および細胞生物学的実験費を次年度分として繰り越した。 令和3年度では、53BP1ノックアウトマウスを早期に復元して繁殖を開始し、当初予定していた53BP1欠損アポトーシス細胞貪食実験および貪食した食細胞による自己免疫抑制応答解析を実施する計画である。マウス個体復元は、研究代表者の所属機関内で随時行っており、速やかな個体復元が可能である。ノックアウトマウス取得のための繁殖環境も整備されており随時使用可能である。
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