研究代表者はこれまでに、アポトーシス時にカスパーゼにより核内に存在するDNA損傷修復タンパク質53BP1が切断されて、機能ドメインを複数保持したC末端断片となること、切断されて生じた53BP1のC末断片が細胞表層にクロマチンと共に露出すること、および53BP1-クロマチンの出現が食細胞によるアポトーシス細胞貪食を促進することを培養細胞を用いたin vitro実験により見出している。本研究では、アポトーシス細胞表層に露出した53BP1-クロマチンが食細胞に自己免疫応答抑制シグナルを送っているのではないかと予想し、53BP1ノックアウトマウスを用いたin vivoおよびex vivo実験系を用いてこれを検証することとした。 令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で動物実験の縮小を余儀なくされ、マウスの初代培養細胞あるいは株細胞を用いたex vivoおよびin vitro実験を進めた。 令和3年度は、令和2年度に引き続きin vitro実験を行い、in vivo実験に着手した。その結果、アポトーシス細胞の表層に露出した53BP1-クロマチンが、食細胞に対して自己への免疫応答を抑制するよう働きかけると考えられる新たな知見を得ることができた。さらに、53BP1によりアポトーシス細胞表層での発現が制御されている新規分子を同定し、その分子を介した53BP1-クロマチンによるアポトーシス細胞貪食時の自己免疫応答抑制機構の一端を見出した。
|