研究課題/領域番号 |
20K23367
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
綱本 良啓 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究職員 (00884355)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 石狩浜 / ハマニンニク / ハマエンドウ / ハマヒルガオ / ウンラン / MIG-seq / クローン構造 / 自然再生 |
研究実績の概要 |
石狩浜(北海道石狩市)の海浜植物群落において、海浜植物4種(ハマニンニク、ハマヒルガオ、ハマエンドウ、ウンラン)について、格子点状に葉をサンプリングし(各種127-171地点)、DNAを抽出した。ハマヒルガオ、ハマエンドウ、ウンランについては、遺伝解析(MIG-seq解析)を行い、クローン構造と遺伝的多様性を解析した。各種において十分な精度でクローン識別を行うことができ、様々なサイズのクローンが入り組んで分布していることが明らかになった。検出されたクローンサイズ(同一クローンが検出された2地点間の距離)は、最大でハマヒルガオ29 m、ハマエンドウ37 m、ウンラン10 mであった。ハマニンニクについて、令和3年度に同様な遺伝解析を行う予定である。また、令和3年度は、各種のクローン構造を考慮した調査区を設定し、内陸植物の侵入による繁殖への影響を調査する予定である。 内陸性植物の侵入により海浜植物群落が衰退した地点において、植生を表土ごと除去し、海浜植物群落の再生試験を開始した(10m×20m×6地点)。表土除去前に実施した植生調査の結果を用いてGLMM(一般化線形混合モデル)を作成したところ、侵入植物であるススキの被度が高い地点では、複数の海浜植物の被度や繁殖器官の存在確率が有意に低いことが検出された。一例として、ハマヒルガオについて示すと、繁殖器官の存在確率の予測値は、ススキの被度が0%の場合は52.4%であるが、ススキの被度が50%の場合は2.9%まで低下した 。これらの結果は、内陸植物の侵入により、海浜植物の分布だけでなく繁殖も制限されていることを示唆している。来年度以降に、植生の再生状況や再生した対象種の遺伝的多様性について調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたMIG-seq解析を3種(ハマヒルガオ、ハマエンドウ、ウンラン)について行い、クローン構造を十分な精度で明らかにすることができた。ハマニンニクについては、遺伝解析は未実施であるが、クローン解析用のサンプリングは終了している。また、植生再生試験についても、予定通り植生調査と植生の剥ぎ取りを行い、試験を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
対象種について、繁殖個体の結実率調査と種子の遺伝解析を行う。それにより、内陸植物の被度やクローン構造が繁殖成功にどのように影響するかを解明する。 設定した植生再生試験区に出現した対象種について、遺伝解析を行い、クローン構造や遺伝的多様性を解析する。
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