研究課題/領域番号 |
20K23368
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
槇納 好岐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10879844)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | プラスチック / 微量元素 / LA-ICP-MS |
研究実績の概要 |
本研究では、環境中に存在するプラスチックの起源を調べる方法として、微量元素を用いたフィンガープリンティングに注目している。そのためプラスチックに含まれる微量元素の分析法を開発し、プラスチック原料に含まれる微量元素組成を調査することで指標としての有用性を明らかにすることが本研究の目的である。 初年度ではプラスチック中の局所微量元素分析法を開発した。具体的にはレーザーアブレーション-誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)を用い、分析装置開発及び分析方法の検討を行った。一般的なナノ秒パルスレーザーを用いたLA-ICP-MSではプラスチックが分析中に溶融し、信号強度が不安定化し測定が困難であった。本研究ではフェムト秒パルスレーザーを応用することで熱影響による溶融を低減し、RSD5%以内の安定した信号を得ることに成功した。開発した手法により5種類の汎用的なプラスチック材(ポリエチレン、ポリエステル、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン)の認証標準物質を用いた分析法の評価を行なった。 測定の結果、信号強度の補正なしでは、各サンプルごとに分析感度が数倍程度異なることが明らかになった。そのため、炭素含有量を用いた内部補正法を応用することで、5種類のプラスチックが全てが同一の検量線上に乗ることを示した。これは異種のプラスチック材や化学組成が不明なプラスチック材についても微量元素測定が可能であることを示唆している。開発した手法を用いて次年度は実試料への応用によるデータ収集と起源推定法の開発を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で調達及び実験の進捗が遅れたが、当初の計画であったLA-ICP-MSを用いた微量元素分析法の開発を本年度で達成した。分析法の開発においてはプラスチックごとの感度差が生じることが予想されたが、炭素を用いた内部補正法により今回評価に用いた5種類全てのプラスチックの感度差を補正することができた。上記分析法の論文については、国際誌へ投稿中である。また、学会等での成果発表については、新型コロナの影響により発表を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
開発した分析法を用いてプラスチック中の微量元素データベースを作成する。具体的には、100種類程度の組成・顔料・添加剤などが異なるポリマー原料中の微量元素を網羅的に測定することで、産業で利用されているプラスチックに含まれる微量元素組成を調べる。得られたデータベースから主成分解析等を用いてプラスチックごとに特徴的な微量元素パターンを抽出し、フィンガープリンティングのための指標開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の調達分において、見積もりより値引きが行われたため、若干の残額が生じた。 残額分については、次年度に繰り越して利用予定である。
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