研究実績の概要 |
環境中のプラスチックの起源の理解は、生態系や水圏への悪影響の懸念から環境学的に重要な課題である。一方で、一旦環境へ放出されたプラスチックの起源を辿ることは困難であり、プラスチックの環境動態の実態解明には至っていない。このような背景から、本研究ではプラスチック製品中に意図せず混入する不純物微量元素の分析とその特徴的な組成から、環境中に広がるプラスチックの起源(原料・元製品等)を明らかにするための方法の開発を目的とした。 プラスチックに含まれる微量元素を調べるための手法として、本研究では超短パルスレーザーを用いたレーザーアブレーション-誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)による分析手法を開発した。従来の酸分解とICP-MSを組み合わせた手法では単一の微小なプラスチックの分析が困難であったのに対して、本研究ではマイクロメートルサイズのプラスチックを粒子ごとに分析可能である。開発した手法により、汎用的な5材質(ポリエチレン、ポリエステル、ABS樹脂、ポリプロピレン、塩化ビニル)に含まれるppmレベルの複数の微量元素の同時分析に成功した(Makino and Nakazato, Journal of Analytical Atomic Spectrometry, 2021)。加えて、開発した微量元素分析法を用いて市販のプラスチック原料に含まれる微量元素組成を分析を行い、複数の不純物微量元素の検出に成功した。今後は、原料データベースの構築とともに環境試料への応用を行う予定である。
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