研究課題
本科研費では研究代表者の有賀がスイス・ベルン大学から千葉大学へ研究の拠点を移し、高エネルギーニュートリノの研究を行ってきた。千葉大学内で新規の研究室を立ち上げ、特任助教の早川大樹(前職ドイツDESYでポスドク)、特任研究員の久下謙一(前職千葉大学工学部グランドフェロー)を秋から本科研費より雇い、学部生4名生と共に研究室を構成してきた。具体的なプロジェクトとしてLHCからの高エネルギーニュートリノを研究するFASER実験、及び高エネルギー陽子反応によるニュートリノ生成を研究するDsTau実験を推進してきた。FASERでは代表者はニュートリノ検出器の共同プロジェクトリーダーとして、またFASER実験の物理コーディネーターとして牽引している。すでに2018年に行なった予備実験の解析を進め、LHCにおけるニュートリノ 反応候補の検出を報告し論文を発表した(10.1103/PhysRevD.104.L091101)。この論文は史上初めてのコライダーからのニュートリノの検出であり、インパクトが大きいものとなった。並行して2022年から始まる本実験のために準備を進め、特にエマルジョン素粒子飛跡検出器の生産・成形、そして組み立て手法の開発を行い、2022年3月には最初のニュートリノ検出器をインストールした。これらを代表者がMORIOND2022コンファレンスで発表した。DsTau実験は有賀はスポークスマンとして推進している。千葉大学にて陽子ビーム照射のためのシステムを開発した。J-PARC E07実験に使われた装置を譲り受け、これを陽子ビームの強度に応じて動作するように改造しCERNへ輸送した。これを用い、2021年の秋に行われたデータ取得を成功させた。現在データ解析中である。
3: やや遅れている
コロナ禍によりヨーロッパとの行き来が困難であり、物資の往来に遅れが生じている。ベルン大学から顕微鏡を輸送し千葉大学に設置する予定が2021年度前半に行う予定が2022年5月到着となった。このため精密測定顕微鏡の開発計画が遅れている。しかし、全体の中でこの遅れは軽微であり、大きな問題ではないと考えている。
研究室のスタッフの体制はそのままに新たに4名の学生(計8名)と共に研究を推進する。FASER実験では2022年度からビーム照射が始まり、2022-2025年にそれぞれ年3回のデータ取得を計画している。検出器の現地での製作は千葉大学の責任であるため、現場の監督を行う。ミュー粒子の同定法を開発し得られたデータをもとに2022年度中にニュートリノの観測の5σ以上での報告を行う。次年度以降にニュートリノ反応断面積の測定を行っていき、レプトン普遍性の検証を行っていく。DsTau実験では2021年に加え2022年と2023年にもデータ取得を計画している。これを成功させる。陽子-タングステン反応断面積の解析を2022年度中に行い、チャーム粒子生成断面積を2023年度に行う。Ds→τ崩壊を検出するために精密顕微鏡開発を進める。これを経てタウニュートリノ生成断面積の実測とそのQCD理論的な解釈を理論家と共に行う。
コロナ禍とロシア・ウクライナ戦争によりスイスからの装置の輸送とそれに関連する研究に遅延が生じたため初年度に買う予定であった顕微鏡カメラやPC等の高額機器の購入を見合わせていた。2022年5月に当該顕微鏡が到着するので順次購入を開始する。初年度に計画していた写真乾板検出器生産への支出(硝酸銀の購入)を2021年6月以降の世界的な銀相場の高騰(4月時点の2倍ほど)の為に見合わせていた。銀相場は高止まりするようであり、硝酸銀の必要量の購入を進める。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
PoS ICRC2021 (2021)
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10.22323/1.395.1025
Physical Review D
巻: 104 ページ: 091101
10.1103/PhysRevD.104.L091101
Earth-Science Reviews
巻: 222 ページ: 103842~103842
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http://physics.s.chiba-u.ac.jp/lepp/