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2022 年度 実施状況報告書

分裂酵母とヒトの3Dゲノム構造とその形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K23376
研究機関北海道大学

研究代表者

野間 健一  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30900039)

研究分担者 太田 信哉  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (00631194)
研究期間 (年度) 2022-02-18 – 2025-03-31
キーワード3Dゲノム構造 / クロマチンドメイン / 分裂酵母 / 細胞老化 / 転写制御 / ゲノミクス / コンデンシン
研究実績の概要

【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】
in situ Hi-C実験を行い、これまでの検出限界を超える超高解像度の3Dゲノム構造情報を獲得した。また、その結果を解析し、数kbの非常に小さいクロマチンドメイン構造(遺伝子ドメイン)を検出した(投稿準備中)。更には、変異型コンデンシン因子を発現させた細胞を用いてin situ Hi-C実験を行い、3Dゲノム構造を解析した所、コンデンシンと転写関連因子間の結合が、コンデンシンの遺伝子領域への導入と、クロマチンドメイン形成の両方に関与するという非常に興味深い3Dゲノム構造の形成機構に関する知見が得られた(投稿準備中)。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】
in situ Hi-C実験を行い、老化細胞に形成される3Dゲノム構造を高解像度で決定することが出来た。その結果を新たなアルゴリズムで解析し、遺伝子のプロモーター領域とエンハンサー領域間の相互作用を網羅的に推定することが出来た。また、RNA-seq実験によって、老化遺伝子の転写活性化を検出できた。更には、3Dゲノム構造と老化遺伝子の転写活性化の関係性を調べたところ、興味深いことに、遺伝子のプロモーター領域が複数のエンハンサーと相互作用しており、その相互作用の数が転写活性化に寄与していることが推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】
分裂酵母株の作成とin situ Hi-Cゲノミクス実験を行い、超高解像度の3Dゲノム構造情報を獲得した。現在は、異なる細胞周期段階の細胞で同様の実験を行うための細胞株を作成中である。また、3Dゲノム構造形成、特にクロマチンドメイン形成に関与するタンパク質群を網羅的に検出するためのプロテオミクス実験系を構築中である。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】
ヒト肺組織由来の線維芽細胞(IMR-90)で発がん性Ras(H-RasV12)を過剰発現させ、がん遺伝子誘発性老化(Oncogene-Induced Senescence; OIS)を誘導した。そのOIS 誘導後の細胞を回収し、in situ Hi-C実験とRNA-seq実験を行い、老化細胞の3Dゲノム構造と転写プロファイルを決定した。加えて、in situ Hi-Cデータから遺伝子のプロモーター領域とエンハンサー領域間の相互作用を検出するアルゴリズムの作成に着手し、プロモーターとエンハンサー間の相互作用を網羅的に推定した。また、プロテオミクス解析の実施には実験材料の均質性が極めて重要となるため、細胞老化を効率よく誘導できる細胞株の作成を試みた。作成した細胞株が薬剤の添加により、短時間で同調してOISの表現型を示すことを確認した。
以上の進捗状況から、課題①と②の両方において、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】
今後は、前年度に得られた研究成果の論文投稿を急ぐと共に、異なる細胞周期におけるクロマチンドメイン構造のゲノム上の精密な分布と、それらドメインの集合体として形成されるゲノムの全体構造を明らかにする。また、異なる細胞周期段階の細胞から核を分画し、DNAに結合している全タンパク質の組成を質量分析により決定する。加えて、転写関連因子とコンデンシン間の結合を介したクロマチンドメイン構造の形成機構の解明を進める。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】
今後は、細胞老化の誘導と変異型コンデンシンの発現を同時にできる細胞株を用いてin situ Hi-CとRNA-seq実験を行い、コンデンシンと転写関連因子間の結合を介した老化細胞における3Dゲノム構造の形成機構と老化遺伝子の転写活性化機構の解明を進める。加えて、前年度に構築したプロテオミクス解析に最適化したヒト細胞株を用いて細胞老化に伴う核内のプロテオーム変化を検出し、老化細胞において3Dゲノム構造形成に関与するタンパク質の特定を試みる。

次年度使用額が生じた理由

当該助成金を財源として雇用予定教員の着任が遅延したため、当年度の一部の人件費を次年度の物品購入に充てる。また、当年度に購入予定であったインキュベーターは、設置場所の確保のために購入を次年度に延期した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] オレゴン大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      オレゴン大学
  • [学会発表] クロマチン高次構造とその生物学的役割:酵母からヒト細胞老化まで2022

    • 著者名/発表者名
      野間 健一
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会(第67回大会)
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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