研究課題/領域番号 |
20K23380
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
三原田 賢一 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (40455366)
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研究期間 (年度) |
2021-03-12 – 2024-03-31
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キーワード | 母子連関 / 胆汁酸 / オキシステロール / 胎児発生 / 不育症 |
研究実績の概要 |
これまでに、Cyp27a1酵素を欠損した母体から出生したマウスでは肺胞形成が不全であるために全個体が呼吸窮迫症候群ですぐに死亡すること、その原因が7α-hydroxycholesterol(7α-HC)の蓄積によるものであることを明らかにしていた。リガンド結合による熱安定性変化を利用した標的タンパク質の同定方法(Proteome Integral Solubility Alterations: PISA)を実施したところ、7α-HCは肺や胎盤上皮で発現しているFauタンパク質に結合し、その安定性を低下させる事がわかった。Fauはリボソームタンパク質の一種で、Small subunitとLarge subunitの間に挟まってアセンブリを制御することが知られている。マウス肺がん細胞であるLLCの培養に7α-HCを添加したところ、タンパク質の合成が低下し、リボソームアセンブリが低下することが観察された。さらにshRNAを用いてFauをノックダウンしたところ、同様にリボソームアセンブリの低下が観察された。Cyp27a1欠損母体内で発生中の胎児の肺を取り出して解析したところ、リボソームアセンブリが低下していた。上記の発見から、妊娠中にCyp27a1酵素が機能しないことで7α-HCのようなオキシステロールが蓄積し、それがFauの機能を低下させてリボソームアセンブリを抑制することで細胞の分化に影響が出ていると結論づけた。本内容は現在論文投稿準備中である。 上記に加えて、Cyp7b1欠損マウスの解析を開始している。Cyp7b1を欠損した母体から出生したマウスは死産ではないが、1週間を経過する頃から死亡する個体が生じることがわかった。現在その死因の特定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り原因物質の同定、PISAを用いた標的タンパク質の同定、さらにはメカニズムの発見まで到達している。さらに他のマウスモデルも解析を始めており、予定通り順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在Cyp7b1欠損マウスの解析を行っており、Cyp27a1欠損マウスで既に発見した内容との類似点・相違点を見つけることでより詳細な分子機序に踏み込む。さらにヒト組換えFAUタンパク質を用い、PISAを応用したスクリーニング実験によりヒトFAUの機能を低下させる代謝物を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポスドク研究員・技官の採用が遅れた(ている)ため、人件費が想定よりも少なかった。新型コロナウィルスの影響で海外渡航が少なかった。予定していた外注分析が遅延しており、次年度(2023年度)に持ち込みになった。
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