研究課題/領域番号 |
20K23381
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中山 雅敬 岡山大学, 研究推進機構, 特任教授 (70740918)
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研究期間 (年度) |
2021-03-12 – 2024-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 分泌因子 / ポドサイト / カルシウムシグナリング / 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
糖尿病では、高血糖により血管内皮細胞機能不全が起こる。その結果血管の管としての機能が低下し微小循環障害による臓器の機能不全につながる。特に糖尿病性腎症は人工透析導入の主要な原因となっている重大な問題である。現行の治療法は、血糖値を下げることが第一に挙げられるが、高血圧によって起こるカタストロフィを避けるため、降圧による対症療法も積極的に行われる。降圧剤の一部には降圧作用に加えて糖尿病下で特定の臓器保護作用を持つものが知られるが、その効果は降圧剤のターゲット特異性や薬物動態により説明されている。 こう言った背景の中私たちは、血管内皮細胞に発現する膜貫通型分子の細胞内ドメインの一部がカルシウムシグナルの下流で切断され、エクソゾームによって分泌されてる可能性を見出した。さらに、同経路は高血糖条件で過剰に活性化し、分泌型の同因子が周辺臓器を構成する上皮細胞を障害していることを見出した。特に、糸球体においてポドサイトの機能を阻害し、アルブミン尿、タンパク尿を誘発し、腎機能の低下に関わる可能性を見出している。また、私たちは、腎保護作用があるカルシウム拮抗薬の一部に同因子の分泌を阻害する機能を見つけ出したが、ないものは阻害することができないことを見つけている。本研究ではこれらの知見を発展させ、糖尿病合併症は血管内皮細胞から分泌される因子による上皮細胞機能障害であるという概念を提唱し、糖尿病合併症の新たな治療法の確立を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究年度では、研究室のドイツから日本への移転を伴ったため、研究計画の中断が予想された。特に新型コロナウイルス蔓延による行動制限や移動制限がある中での研究室移転は、予期せぬ遅延に見舞われた。実験に用いる動物や細胞の移動など困難に見舞われた。 私たちは、血管内皮細胞から分泌される因子を遺伝子操作によって血管内皮細胞特異的にKOすると、高血糖下での腎機能の低下に著効があることを見出している。また、この因子の分泌を抑制する物質を細胞培養系を用いてスクリーニングした結果、腎保護作用を持つことが知られるカルシウムチャネル拮抗薬を同定した。本研究年度は、内在性の同因子を細胞培養系のみならず、マウスにおいても検出を可能にするシステムの開発を行った。血液中や尿中に存在する同因子は微量であることから大きな困難が予想されたが、定量的に再現性良く検出を行うことができるシステムを開発した。本研究提案では、今後の臨床応用や薬剤の開発を行う上で、内在性の同タンパク質を血液や尿などのクルードなサンプルから簡便に検出することが極めて重要であると考えられることから、本成果は大きな進歩といえ、今後の研究を飛躍的に進めるツールを確立したと考えている。 また、高血糖下における分泌性因子の血管内皮細胞特異的KOマウス、同因子の受容体のポドサイト特異的KOマウスの解析を行い、対称群のマウスと比較して腎機能、アルブミン尿の解析の改善を確認し分子メカニズムの解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のこれまでの成果をまとめ、論文投稿中である。 上記の成果に基づき、in vivoにおいて我々の同定した因子が糖尿病性腎症の増悪化に関わっていることを示していく。
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