• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

中国の芸術実践系大学において有効な「保存修復」教育の整備に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0003
研究機関東京藝術大学

研究代表者

荒井 経  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (60361739)

研究分担者 國司 華子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (70710763)
武田 裕子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (60770154)
向井 大祐  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40889135) [辞退]
大和 あすか  独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (30823752)
谷津 有紀  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助教 (20889208)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2026-03-31
キーワード保存修復 / 文化財保存 / 東洋絵画 / 書画 / 模写 / 中国画 / 日本画
研究実績の概要

本年度は、昨年度に引き続き、中華人民共和国の美術大学における保存修復専攻で使用することができる保存修復テキストの作成に傾注した。特に写真・挿図の準備とレイアウトを進め、ある程度の冊子体がイメージできる状態になった。
特に、写真については、当該分野を説明するために必須でありながらも、文化財の損傷状態という所蔵者や作者にとって好ましくない画像が必要となることがネックとなるが、本年度は本研究の拠点である東京藝術大学美術館からの協力を得て、所蔵品の損傷状態を撮影することができたことは大きな成果である。
また、日本向けの既存テキストの多くが、書画文化財の修理方法や用具・材料を解説する事典的なものであったのに対して、初学者が保存修復の理念や保存環境などの要素から繙けるような内容になるためのレイアウト再考、文面推敲を行った。
本研究のカウンターパートである広州美術学院とは、書画修復を担当する何韵旺副教授とオンラインでの打合せを重ねたほか、広州美術学院の招聘に応じて研究代表者の荒井、研究分担者の大和に研究協力者1名を加えた3名で渡航し、教育の現状や課題について具体的なリサーチを行うことができた。
このほか、中国において広州美術学院以外の大学として中央美術学院が主催した国際学術シンポジウムに研究代表者の荒井と研究協力者1名が招聘されて発表を行うとともに、参集した中国各地の教授たちから教育研究の実状リサーチすることができている。同様に、保存修復専攻を近年設置した天津美術学院とは、担当教員らとのオンライン会議を行うことによって、ニーズのリサーチを行うことができた。さらに、美術大学以外の主要機関となっている陝西省歴史博物館(西安)に研究代表者の荒井と研究分担者の大和に研究協力者1名が(本科研以外の費用で)訪問、敦煌研究院とはオンライン会議が実施できている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、コロナ禍の渡航規制がある程度緩和されたものの、まだ渡航に不安が残っていることと、中華人民共和国への渡航にビザ取得が義務付けられたことによって、充分な渡航調査や対面での意見交換が不足した。ただし、カウンターパートである広州美術学院側の招聘事業に応じて、本研究組織から3名が渡航できたことによって、本研究の進展が促進されている。
また、中国の美術大学で使用可能な保存修復テキストの作成については、より現実的で初学者にわかりやすいレイアウトに再編したため、進捗としてはやや遅れることになった。

今後の研究の推進方策

本年度は、いまだ中華人民共和国へのビザが必要な状況でスタートしているため、大人数での渡航や長期の渡航が難しいと予測される。そのため、渡航は少人数として複数回を実施し、研究最終年度である来年度の学術研討会や展覧会の開催に備える。
また、中国語版での出版を目指している保存修復テキストの編纂については、本年度内に日本語原稿を完成させ、デザインやレイアウトを精査するとともに、各種の専門家からの助言を得て加筆修正を行う。また、職人言葉が専門用語になっている当該分野での主要な単語について、修復と語学の両面から中国語訳を検討する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍への警戒が完全に払しょくされず、また中華人民共和国への渡航にビザの取得が必須になるなどの悪条件により、旅費が予定通りに執行できなかったため。また、コロナ禍中のオンラインによる会議や研究会の実施が普及したことによる代替措置が可能になったことも旅費の抑制につながった。さらに、研究代表者を中心に、本研究での渡航予定先からの招聘があったことによる目的の達成もあった。
次年度は、渡航条件が改善されていることに期待し、保留されている必要な対面交流を実施していく計画である。

  • 研究成果

    (28件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 9件、 招待講演 10件) 図書 (5件)

  • [国際共同研究] 中国芸術院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国芸術院
  • [国際共同研究] 中央美術学院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中央美術学院
  • [国際共同研究] 敦煌研究院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      敦煌研究院
  • [国際共同研究] 広州美術学院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      広州美術学院
  • [国際共同研究] 李應魯美術館/国立現代美術館(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      李應魯美術館/国立現代美術館
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] 東方古代壁画と現代日本画技法2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 雑誌名

      敦煌石窟芸術研究国際学術研討会論文集

      巻: ー ページ: 29-42

  • [雑誌論文] 近代日本画色材通史2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 雑誌名

      2023中国伝統色彩学術年会論文集

      巻: ー ページ: 191-202

  • [学会発表] 静岡県立美術館所蔵 伊藤若冲筆《樹花鳥獣図屏風》に使用された色材の調査報告2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経・大和あすか・須澤芽生・鈴木七実・山口美波・木下悠・山下裕二
    • 学会等名
      文化財保存修復学会第45回大会
  • [学会発表] 東洋の伝統絵画から現代絵画へ2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      韓国・淑明女子大学特別講演
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 東洋の伝統絵画から現代絵画へ2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      韓国・伝統文化大学特別講演
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 素明再考2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      藤田記念博物館記念講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 戦後日本画という「日本画」の位相2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      宮城県美術館美術館講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 東方古代壁画と現代日本画技法2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      敦煌石窟芸術研究国際学術研討会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 近代日本画色材史2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      中国伝統色彩学術年会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 現代日本画における美人画ブーム2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      首届工筆画学術論壇
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 東京藝術大学における保存修復の教育と研究2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      国際修復連携成立大会第一回論壇
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 李應魯芸術と紙2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      李應魯生誕120周年記念国際シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 続・東方古代壁画与現代日本画技法2023

    • 著者名/発表者名
      荒井経
    • 学会等名
      国際絵画教育連盟シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 江戸後期のパトロネージュの構造解析を目的とした三代歌川豊国「錦昇堂版役者大首絵」の技法材料調査2023

    • 著者名/発表者名
      大和あすか、日比谷孟俊、田辺昌子、山内れい、髙橋志保
    • 学会等名
      文化財保存修復学会第45回大会
  • [学会発表] 色材分析による縮緬絵とオリジナルの比較2023

    • 著者名/発表者名
      大和あすか
    • 学会等名
      縮緬絵シンポジウム
  • [学会発表] 『釈迦八相倭文庫』の表紙における石黄2023

    • 著者名/発表者名
      大和あすか
    • 学会等名
      国文学研究資料館×実践女子大学文芸資料研究所 共催国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] 錦絵における鉛丹の変色技法の検証2023

    • 著者名/発表者名
      大和あすか
    • 学会等名
      第六回公益財団法人芳泉文化財団 文化財保存学日本画・彫刻研究発表展
  • [図書] サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展 図録2024

    • 著者名/発表者名
      千葉市美術館
    • 総ページ数
      219
    • 出版者
      千葉市美術館
  • [図書] アートの処方箋2023

    • 著者名/発表者名
      小澤基弘監修
    • 総ページ数
      290
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      978-4-8010-0792-5
  • [図書] 李應魯ー東から吹く風、西から吹く風2023

    • 著者名/発表者名
      李應魯美術館・国立現代美術館
    • 総ページ数
      255
    • 出版者
      李應魯美術館・国立現代美術館
    • ISBN
      978-89-6303-379-2
  • [図書] シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画2023

    • 著者名/発表者名
      ポーラ美術館
    • 総ページ数
      238
    • 出版者
      求龍堂
    • ISBN
      978-4-7630-2326-1
  • [図書] 紙のレンズが開く古典籍・絵画の世界2023

    • 著者名/発表者名
      江南和幸・佐藤悟・横井孝(新コディコロジー研究会) 編
    • 総ページ数
      296
    • 出版者
      勉誠社
    • ISBN
      978-4-585-39036-7

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi