研究課題/領域番号 |
20KK0006
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
盛田 帝子 (飯倉帝子) 大手前大学, 総合文化学部, 准教授 (40531702)
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研究分担者 |
永崎 研宣 一般財団法人人文情報学研究所, 人文情報学研究部門, 主席研究員 (30343429)
松本 大 奈良大学, 文学部, 講師 (30757018)
飯倉 洋一 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40176037)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 古典復興 / 光格天皇 / 絵巻 / 宮廷和歌 / 国際共同研究 / 翻訳 / デジタルヒューマニティーズ / 源氏物語 |
研究実績の概要 |
本年度は5か月間という実施期間の短さに加えて、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、予定していた海外調査・国内調査および対面しての国際的な打ち合わせを実施できなかった。しかし、オンラインシステムを使い、本研究の象徴的古典籍であるホノルル美術館所蔵レインコレクションの『十番虫合絵巻』について、ハワイ大学マノア校のロバート・ヒューイ教授およびカリフォルニア大学バークレー校のジョナサン・ズイッカー准教授の協力を得て、国際共同研究会である「ホノルル美術館所蔵『十番虫合絵巻』研究会」の準備会を発足し、研究メンバーの役割分担などを定めた。ヒューイ教授からは『十番虫合絵巻』を国際的に発信してゆく方法について助言を受け、ズイッカー准教授からはミシガン大学に所蔵されている関連古典籍の情報を得た。準備会では、本研究が、国内外の古典教育に果たす役割について、本研究課題のメンバー間で綿密な意見交換や議論を交わし、『十番虫合絵巻』という古典籍が、くずし字教育や古典文化教育のコンテンツとして、国際的にも大きな可能性をもっているという認識を共有した。加えて、次年度にオンラインによる定期的な国際研究会を開催し、その成果として、『十番虫合絵巻』の画像(影印)・翻刻・注釈・現代語訳・英訳・研究を出版・WEB公開することと、公開する際の課題について確認し、ホノルル美術館側との原典画像複製についての協議を進めた。カリフォルニア大学バークレー校所蔵の日本古典籍を用いた「18・19世紀の宮廷における古典復興」の電子展示にむけての共同研究については、コロナ禍の中で、いかに始動・展開していくかを議論している。なお、本研究課題に関しての本年度の成果は、8本の研究論文、4回の学会発表(招待講演、国際学会を含む)、1冊の著書の刊行として公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大のため海外渡航ができない状況が続いており、当初計画していたホノルル美術館での原本調査やUCB東アジア図書館での調査を延期せざるを得ない状況となった。また、同じ理由から都道府県を跨いでの国内での古典籍調査も極めて困難になっている。したがって、当初計画していた国内外の古典籍調査を次年度廻しとし、ホノルル、カリフォルニア、日本の科研メンバーで、オンライン上での研究情報交換会を綿密に行った。その結果、次年度初めから、メンバーを中心とするオンライン研究会を立ち上げ、その研究成果を出版およびWEB上で公開する計画を策定した。参加者は、科研メンバーに加え、ハワイ大学の学生、カリフォルニア大学バークレー校の学生を含み、教育および研究に資する国際的な研究会として運用する。また、研究会で使用する古典籍の写真使用や出版許可などについても、ホノルル美術館のスタッフと数回に及ぶオンライン会議で打ち合わせを行って契約を結ぶ準備を整え、次年度からすぐに国際的な研究会を発足することを決定した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染終息後の見通しを持ちながら、次年度初めからオンラインによる国際的研究会を月に一回定期的に行う。ホノルル美術館所蔵『十番虫合絵巻』の原本の写真の使用許可をとり、ホノルル、カリフォルニア、日本の三か所をオンラインで繋ぎ、『十番虫合絵巻』の解読を通して国際的な研究を行う。研究会の中心メンバーは本科研のメンバーであるが、ハワイ大学、カリフォルニア大学バークレー校の学生も参加し、くずし字で記された絵巻物を一緒に解読しながら議論を展開してゆく。日米両方の研究者と学生が、『十番虫合絵巻』という十八世紀後半に日本で作成された絵巻物を異なる視点から丁寧に読み議論することで、日本の古典研究の方法を相対化し、未来を見据えた国際交流をはかり、日本の古典文学の魅力をどのように伝えるか、日本古典を日米双方の教育の素材としてどのように展開できるかということを究明してゆく。また、二年後に行う国際シンポジウムの具体的な計画および研究成果をどのように国際的にWEB上に公開してゆくかということについても策定し実行に移す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大のため、予定していた海外における古典籍調査や打ち合わせが不可能となり、国内においても、調査すべき古典籍を所蔵する機関において閲覧・調査が中止されたり、都道府県を跨いでの調査が極めて困難な状況になるなどして、当初計画していた古典籍調査を延期せざるを得ない状況が続いている。そのため、調査や打ち合わせのための経費を次年度に使用せざるを得なくなった。国内外の調査先での調査や打ち合わせが再び可能になれば、すぐに調査が行えるように、既にホノルル美術館の担当者と綿密な計画を行いメンバーとの情報共有も行っている。調査が再開でき次第、旅費として予算を使用する。また、次年度初めからオンラインによる国際的研究会を月に一回定期的に行うが、その成果を出版物およびWEB上で公開するための予算として使用する。
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