研究課題/領域番号 |
20KK0008
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 誠一 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 教授 (10261249)
|
研究分担者 |
森島 邦博 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30377915)
西尾 晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究機関研究員 (30880108)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
|
キーワード | ミューオン透視法 / コパンのマヤ遺跡 / 王墓 / マヤ文明 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究は、2020年度の11月から開始されたため、2021年度終了時までに実質的に1年5か月間の活動であった。コロナ禍ではあったが、研究代表者の中村は現地の共同研究者と頻繁にZoom等を使って連絡をとり、本国際共同研究の遂行や現地調査実施のための調整に努めた。また、2021年度の後半には、コロナ禍が下火になった時期をとらえて現地へ渡航し、現地での発掘調査指揮を含む研究活動を再開した。
共同研究者である名古屋大学の森島と西尾からなる名古屋大学宇宙線素粒子物理学チームは、2018年および2019年に設置した原子核乾板の飛跡読み取りおよびデータ解析を進めた。さらに、原子核乾板の設置位置に対応する遺跡内の三次元可視化領域を確認するために、三次元レーザー測定により取得した11号神殿の3次元モデル内に検出器を配置した。設置位置から期待される可視化領域と宇宙線イメージングの観測結果の対応を付けて、空洞の探査を行った。その結果、2018年および2019年の宇宙線イメージを用いた一次解析では、2m以上の空間は検出されなかった。
一方、中村は考古学部門を担当し、最初に設置された原子核乾板のいくつかに、コパン遺跡11号神殿内部の埋蔵建造物と関連して、碑文に記載されているような王朝初期(7代目王)の王墓が存在する可能性を示すと解釈できるような解析結果を見出した。そのため、碑文が刻まれたステップの前に2メートルほどの竪穴を発掘して前時期の漆喰の床面を確認した。碑文情報が正しいとするとこの床面の下に石室墓があるはずであり、その地点へ向かう発掘の第一歩である。この発掘は、2022年度にも継続される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍にあったにもかかわらず、現地渡航も実施し、全体計画はおおむね順調に推移していると評価できる。
研究を補佐する若手研究者(大学院博士後期課程院生)とともに、機材の使用法に習熟するトレーニングも受講し、獲得した3Dデータの処理・活用法も少しずつ学んでおり、開始したトンネル内の発掘調査の結果とあいまって、今後の現地調査における大きな成果が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究の3カ年計画の最終年度である。そこで、小乾期の時期である年度なかばの9月から10月にかけて集中的な現地調査を実施し、研究目標の達成を図る。具体的には、宇宙線素粒子物理学チームと考古学チームで研究活動を分担し、以下のように進める。
宇宙線素粒子物理学チームは、3次元モデルを用いた宇宙線シミュレーションを行い、2018年および2019年に取得した観測データとの比較を実施する。その比較分析により、三次元的な空洞検知領域の定量評価を行い、検出可能な空洞の大きさの感度評価を行う。また、より精度を上げた観測のための観測装置の設計・製作を行う。 考古学チームは、2021年度までのミューオン透視により、何らかの空間が存在する可能性のある場所の発掘を継続して下層の建造物内に王朝初期(7代目王)の石室墓があるかどうかを検証する。
年度の後半には、古代アメリカ学会の学術誌に研究成果をまとめた論文を出版するとともに、国際学術誌に研究代表者と研究分担者が共著で英語論文を投稿して研究成果を国際舞台で初めて出版することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、十分な渡航・現地滞在期間が確保できなかったため。
2022年度に原子核乾板の飛跡解析に必要な消耗物品の購入などに加えて対処する予定である。
|
備考 |
本年度、1つの国際共同制作の番組、2つのNHKの番組において、本研究のプロセスに関して放映された。それらは以下の通りである。 Lost Tombs of the Maya (英・仏・米・日の共同制作) 古代マヤ大発掘(NHK BSプレミアム)、コズミックフロント「シリーズ古代遺跡透視 マヤ文明の謎を解き明かせ」(NHK BSプレミアム)
|