研究課題/領域番号 |
20KK0018
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻村 真貴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10273301)
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研究分担者 |
清水 和哉 筑波大学, 国際室, 准教授 (10581613)
榊原 厚一 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40821799)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 地下水 / 地表水 / マルチ・トレーサー |
研究実績の概要 |
2020年度は、COVID-19感染拡大の影響により、マレーシアへの渡航がかなわなかった。そのため、現地カウンターパートである、マレーシア原子力機関のKamarudin博士より、地下水のサンプルを送ってもらい、その安定同位体、トリチウム、無機溶存成分等の分析を行うとともに、2019年度まで、現地クラン川流域において実施していた地下水、河川水調査により得られたデータの解析を行った。 その結果、クラン川流域の地下水は、標高概ね100m以上の森林に被覆された丘陵および山地にもたらされた降水を起源とした水により主として涵養されていることが、各種水の水素・酸素安定同位体比における空間分布解析により示された。 クラン川下流の低地における地下水の安定同位体比は、河川水のそれに比較し顕著に低く、この値を説明し得る水は、標高100m以上の降水であると判断された。クラン川支流の源流域に相当する丘陵池における降水も、低地における地下水の主要な涵養源の一つと考えられた。 熱帯湿潤域の低地における地下水は、主として源流部の山地・丘陵地における降水が涵養源であるという知見は、タイ・バンコク等の、帯水層構造が比較的単純な地質条件下においては、これまでも得られていたが、クアラルンプール地域のように、堆積岩と花崗岩等が混在する複雑な地形、および雨季と乾季が明瞭ではない熱帯湿潤域においては、初めての知見と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地フィールド調査や、現地カウンターパートとの直接打合せ等ができていないが、水試料を現地カウンターパートから送付してもらうことや、情報交換をオンラインにより行うことにより、研究対象地域の基礎情報を収集している。また、既存のデータ等による解析を行うことにより、渡航できないことによる種々の遅れを補ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、COVID-19感染状況をみつつ、現地渡航の可能性を探る。その上で、現地クラン川流域における、地下水、河川水、ダム水等のサンプリングを、可能な限り実施する。加えて、地下水位、河川流量等に関する既存データを収集する。 また、現地カウンターパートと、ワークショップを開催し、クラン川流域の水循環に関する情報共有、課題検討等を行う。 渡航が不可能な場合には、カウンターパートとのオンライン交流を定期的に行いつつ、サンプリング等を現地に依頼し、分析を日本において行う方法により、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度において、COVID-19の感染拡大により、マレーシアへの渡航が不可能であったため。今年度、日本および現地の状況をみながら、渡航のタイミングをはかる。
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