研究課題/領域番号 |
20KK0018
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻村 真貴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10273301)
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研究分担者 |
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 教授 (10581613)
榊原 厚一 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40821799)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | クアラルンプール / クラン川流域 / 地下水 / 水資源 / 熱帯湿潤地域 |
研究実績の概要 |
2022年8月、9月、12月に各々1週間程度、マレーシア・クラン川流域において、源流域から沿岸の流出域にかけ、河川水、地下水、貯水池等の水試料採取を行った。加えて、クラン川流域において、マレーシア環境・水省の灌漑排水局が所管する気象・河川流量観測所の降水量、河川流量、河川水位、地下水位等の既存データを取得した。 採水試料は、実験室に持ち帰り無機溶存成分濃度、水素・酸素安定同位体比等の分析に供した。また、取得した既存の降水量、河川流量、地下水位等のデータは、流域における降雨流出モデルの構築に供した。 河川水における水素・酸素安定同位体比は、源流域より標高の低下に伴い徐々に高くなり、標高26mにおいて最大値を示したが、その後標高の低下とともに同位体比も低下する傾向が認められた。一般的に、河川水における水素・酸素安定同位体比は標高の低下とともに上昇する傾向があるので、本研究対象地域における結果はこれとは異なるものであった。標高26m付近は、地質の境界部分に相当している。また、当該地域の地下水位データをもとに、浅層地下水と深層地下水の各々地下水面図を作成し、地下水流動系を評価したところ、クラン川の標高26m付近は地下水の流出域に相当していた。以上のことから、クラン川河川水の水素・酸素安定同位体比の形成には、周辺地下水からの流出が影響を及ぼしていることが推定された。 さらに、既存の降水量、河川流量を用い、数値解析により河川の流出特性を計算したところ、クラン川の流出特性を良好に再現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去2年間、新型コロナ感染症拡大の影響で海外フィールドにおける調査ができなかったが、2022年度においては、感染対策を十分にとりつつ、計3回のフィールド調査を行った。データ解析は順調に進んでいる。さらに、本研究の基盤的情報に相当するクラン川支流の降雨流出プロセスに関する論文を国際誌に投稿し、採択された。以上のことから、順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度調査で得られたデータの解析を更に進めるとともに、クラン川流域の地表水-地下水循環系に関する論文を、国際誌に投稿するための準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、および2021年度は、感染症拡大の影響で、現地調査・現地打合せができなかった。このため、既存試料等をもとに研究を進めた。2022年度は合計3回の現地調査等を実施し、分析・解析等を進捗させたが、予算に次年度使用額が生じた。2023年度は、更に現地調査・打合せ等を実施する予定であり、予算を予定通り使用する方針である。
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