研究課題/領域番号 |
20KK0020
|
研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (90599226)
|
研究分担者 |
松本 直之 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (30814389)
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 室長 (60435906)
大西 秀之 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60414033)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
キーワード | リビングヘリテージ / 文化遺産 / ケイパビリティー / アクションリサーチ / ドファール / オマーン / 伝統建築 |
研究実績の概要 |
応募時の予想を超えて、2021年度いっぱいコロナ禍による渡航制限が継続したため、2020年度に引き続いて、現地調査の実施を見送った。建築復興班(分担者:松本直之、協力者:林憲吾、腰原幹雄、大坪正英、菊本英紀、田窪淑子)は、新たにオマーンのソハール大学工学部のモシン・クレシ(Mohsin Qureshi)助教との国際共同研究体制を構築し、同大学の実験室において調査対象地で採取した建築材料の蛍光X線分析とふるい試験・沈降分析を実施した。また、東大にて日鉄テクノロジーとの協働により仕上げ材(ヌラ)の有機成分分析を実施し、有機成分の検出に成功した。さらに、石材の圧縮試験では、最大強度が軟石程度のかなり軟らかい材料を用いていることが明らかになった。この結果は、ソハール大学における試験結果とも合致する。サラーラ旧市街の「判事の家」のリノベーションについては、本研究課題の海外共同研究者であるナイマ・ベンカリ(Naima Benkari)を通じて「判事の家」の家主とコンタクトを取り、倒壊した邸宅のリノベーションの方向性についての意向確認と、建築設計事務所を交えた設計案の検討を継続している。特筆すべき成果としては、田窪がソハール大学で開催された国際シンポジウムで研究報告を行い、その成果がプロシーディングス論文として公刊され、さらに修士論文として完成したことが挙げられる。 いっぽう、リビングヘリテージ班(LH班、代表者:近藤康久、分担者:石村智、大西秀之)は前年度から継続して、文献調査によってリビングヘリテージに関する国際動向と事例の収集を進めた。特筆すべき研究成果としては、文化遺産国際協力コンソーシアム主催「文化遺産にまつわる情報の保存と継承」研究会に近藤と林、同「海と文化遺産」シンポジウムに石村がそれぞれ登壇し、本研究課題に関連する研究の現状と問題意識を発信したことが挙げられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、現地調査の実施が当初計画を超えて遅れている。しかし、建築班による材料分析にあたり、現地国に新しい共同研究体制を構築できたことと、海外共同研究者や現地の家主との連絡調整を継続していることから、当初計画を挽回することが可能であると自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
LH班は引き続き文献調査による国際動向と事例の収集を進める。研究代表者の近藤は渉外と研究経過のメタ分析を担当するとともに、有形文化遺産の視点から国際動向調査と事例検討を行う。分担者の石村は無形文化遺産、大西は文化的景観と文化的記憶の観点からそれぞれ調査・検討を行う。建築班は土と石による伝統的な組積構造体の構造性能や耐久性・室内環境性能の試験を実施し、その成果を大工棟梁からの聞き取りの結果と対照させることにより、伝統構法の復元と代替構法の開発を進める。また、現地共同研究者、「判事の家」の家主及び建築設計事務所とリノベーション・プランの素案となるアイディアを共創する。2022年度中に1週間程度サラーラを訪問し、「判事の家」の文化遺産総合調査とワークショップを実施し、計画の遅れを取り戻す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により現地渡航ができなかったため、旅費を次年度にあたる2022年度に使用することとした。次年度使用額の充当により、2022年度は現地調査に基づく研究を効果的に推進できる見通しである。
|