研究課題/領域番号 |
20KK0022
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
関 ふ佐子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30344526)
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研究分担者 |
西森 利樹 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (30795860)
原田 啓一郎 駒澤大学, 法学部, 教授 (40348892)
柳澤 武 名城大学, 法学部, 教授 (70363306)
川久保 寛 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (90706764)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 高齢者法 / パンデミック / 社会保障法 / 保護と年齢差別 / 労働法 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究が取り組む学術的な問いは、①高齢者の保護と年齢差別の関係をどうとらえるか、②新型コロナウイルス感染症といったパンデミック下で明らかになった、高齢者の保護と年齢差別をめぐる具体的な課題にどう取り組むかである。 2022年度も、第一に、これらの問いについて、各人が文献調査により論点や課題を探るほか、高齢者法研究会に多分野の研究者等を招聘し報告を行った。研究協力者である研究者や実務家も参加する高齢者法研究会で研究成果を報告し討議することで、現場の課題を炙り出し、解決方法を探り、本研究遂行の土台とした。また、HP高齢者法Japanによる情報発信も随時行った<https://elderlawjapan.jp/report/>. 第二に、2022年6月に、成年者の行為能力を統一テーマとする7th World Congress on Adult Capacity(イギリス開催)で、研究協力者の櫻井幸男が研究成果を発表した。新型コロナウイルスの影響で海外に渡航できなかった者は、文献調査により日本と高齢社会先進国との比較法研究を進めた《関・西森・柳澤(アメリカ)、川久保(ドイツ)、原田(フランス)》。 第三に、2022年5月に共同研究者であるオーストラリアのJohn Chesterman博士を研究会に招聘し、オーストラリアにおける成年者保護の将来について報告いただいた。2023年3月には、アメリカのAlexander A. Boni-Saenz教授を研究会に招聘し、教授の打ち立てた高齢者の定義に関する議論や保護と年齢差別について日本との比較を意見交換した。双方とも同時通訳入りのオンラインで開催した。 第四に、神奈川県高齢者福祉施設協議会と提携し、YNU成熟社会コンソーシアムと共同で、神奈川県域の老人ホームにおけるコロナの影響についてアンケート調査を実施し、その結果を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究者による文献調査、多分野の研究者や実務家、海外の研究者との意見交換を受け、「10.研究発表」に記載した形で各人が研究成果を公表した。 例えば、1)関は高齢者の功績という総論的課題、2)川久保はドイツの介護制度や相談支援の法的位置づけ、3)西森はアメリカ成年後見法における成年後見人の要件、4)原田は医療関係における多職種の専門性と他職種間連携、5)柳澤は年功型賃金と定年の合理性などについて研究を行った。 2022年5月の高齢者法研究会で、John Chesterman博士に「オーストラリアにおける成年者保護の将来」について報告いただき、日本側の報告者も含めて日米の異同について討議した。2023年3月にはAlexander A. Boni-Saenz教授に“The Definition of Legal Age”についてご報告いただいた。例えば、生物学的年齢や暦年齢のほかに主観的年齢という観点を設けて議論することの意義を討議し、高齢者とは何かという根源的な問いについて多様な意見交換ができた。 神奈川県域の老人ホームにおけるコロナの影響についてのアンケート調査では、まずは研究会において、加藤馨(特別養護老人ホーム陽光の園施設長)から高齢者福祉施設に新型コロナウイルスが及ぼす影響と課題の話を聞き、現場の課題を把握した。そのうえで、松﨑吉之助(老年学)に第6派に関する調査と新型コロナ陽性者発生に伴う対応についてご報告いただいた。アンケート調査の内容を検討し、研究会において分析することで、様々な課題を炙り出せた。 多分野の研究者等を高齢者法研究会に招聘し、報告後に意見交換できた(2022年7月: 石尾智久(民法学)「高齢者と不法行為」、西希代子(民法学)「高齢者と財産-管理・承継」、9月: 中谷雄二(弁護士)「名古屋自動車学校事件(名古屋高判令和4年3月25日)」。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度もオンラインにより海外の研究者と行った意見交換が大変有意義であった。新型コロナウイルスの影響で海外の研究者も含めてオンライン(zoom利用)での研究会が身近となった。同時通訳者を介してのスムーズな討議の実現といった、オンライン研究会の手法の蓄積は、本研究のような国際共同研究にとって貴重な財産となった。2023年度も、これまで蓄積したノウハウを生かし、海外の研究者との意見交換を進めたい。 2023年度は、海外渡航の目途が少しずつたってきており、関がアメリカに渡航し、国際連合での議論の状況などを調査するとともに、来年度、若手研究者や実務家に海外の研究者と現地で交流する機会を創るための下準備を進める予定である。この他、主に文献調査という形で、2022年度と同様の形で日本と高齢社会先進国との比較法研究を進める。 また、主たる海外の共同研究者であるNina Kohn教授といった、高齢者法研究において重要な研究を進める世界各国の高齢者法の研究者とのオンライン研究会のほか、2024年2月か3月にはオンラインでの国際会議に数名の研究者を招聘予定である。海外の研究者とは、パンデミックが鮮明にした各国の経験を討議するとともに、高齢者の保護と年齢差別の禁止をめぐる論点を検討する際に重要な原理的論点について、高齢者法の視角から討議していく。 2023年度も、2020・2021年度からの研究を継続し、神奈川県高齢者福祉施設協議会と提携し、YNU成熟社会コンソーシアムと共同で、神奈川県域の老人ホームにおけるコロナの影響について分析する予定である。 この他、2022年度に引き続き多分野の研究者や実務家を研究会に招聘するほか、文献調査により本研究テーマに関する論点や課題を探っていく。2023年度も各人が研究成果を高齢者法研究会等で報告し討議を重ねるほか、HPによる情報発信も随時行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で予定していた海外渡航が中止となった。このため、予定していた額を使用できなかった。 本研究費は次年度に研究費を持ち越せるため、いただいた研究費を大切に使用するべく、新型コロナウイルスとの関係で海外渡航がスムーズとなった段階で、繰り越した研究費を使用して海外での研究調査を実施する予定である。
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