研究課題/領域番号 |
20KK0023
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊達 規子 (大久保規子) 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00261826)
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研究分担者 |
大塚 健司 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター環境・資源研究グループ, 研究グループ長 (20450489)
鳥谷部 壌 摂南大学, 法学部, 講師 (40823802)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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キーワード | 環境法 / 環境政策 / タイ / コミュニティ / 参加 / 自然資源 / 森林管理 / 水管理 |
研究実績の概要 |
タイ憲法は,自然資源に係るコミュニティの管理・利用権と参加権を保障しているが,これまで参加を具体化する法律は未整備であった。これらの問題を改善するために,2019年に水資源法とコミュニティフォレスト法が相次いで制定され,現在,新法の具体的な執行方法が議論されている。本研究は,①コミュニティの権利の内容と性質,②新法の到達点と課題,③コミュニティ参加型の管理組織と手続のあり方を検討し,新法の執行強化と改善に向けた具体策を提示することを目的とする。 今年度は,国内のメンバーによる研究会を3回,Mae Fah Luang大学のメンバーも交えた研究会を3回開催した。これに加え,Mae Fah Luang大学が企画した「政策フォーラム」等に参加し,報告等を行った。さらに,タイ語のみで英訳されていない資料の英訳を行うことも含め,今後の研究に不可欠な基礎的資料の収集を続けた。 これらの作業により,とくに水管理について,水資源法前の水管理の課題と制度の特徴について分析を進めることができた。水資源に関する関係行政機関は伝統的に多岐にわたるうえ,北部タイ,中部タイ等,地域によって水管理の手法や課題が異なることから,水資源法により,統合的な水管理と地域ごとの参加型水管理との調和がどの程度達成されるのかは現時点でも不確実である。また,国際河川管理については,周辺国との調整が必要になるところ,今年度は,Mae Fah Luang大学のメンバーの協力により,北タイにおける周辺国との紛争と協力の特質について議論を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年6回の研究会と関連文献の収集・サーベイにより,論点が次第に整理され,課題が明確になっているという点では,順調な進捗が見られる。ただし,本来,今年度は,次年度の現地調査に向け,対象地の絞り込みと論点表の作成を行う予定であったところ,コロナ禍により,現地調査の具体的見通しが立たっていない。とくにコミュニティのヒアリングについては,現地の人々が感染への不安を抱かないよう慎重に行う必要がある。また,行政資料についても現地で直接収集しなければ入手困難なものもあり,十分な体系的収集に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,第1に,タイの水・森林管理関係法令の整理・分析を行う。とくに新法に関連する各種下位法令の整備情報が十分に入手できていないため,今年度は,この点に力を入れる。少なくともバンコク所在の行政機関については,直接ヒアリングを行いたいと考えているが,コロナ禍により,これも難しい場合には,オンラインによるヒアリングの可能性を探る。 第2に,コミュニティの権利およびコミュニティフォレストについては,周辺国でも様々な制度改革の動きがあることから,インドネシア,カンボジア等の動向の把握にも努め,地域全体の潮流とタイの異同について検討する。 第3に,コロナの感染状況が落ち着けば年度後半に北タイの現地調査を行う。これに備え,論点の整理,ヒアリング先の絞り込み,質問票の作成等を行う。依然として直接現地に行くことが困難な場合には,Mae Fah Luang大学のメンバーのみによる調査やインターネット環境が確保できればハイフレックスでの調査の可能性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた行政資料の翻訳の一部が実施できなかったため。この未使用分は、次年度へ持ち越した翻訳作業に関する謝金に充てる。
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