研究課題/領域番号 |
20KK0033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
薛 進軍 名古屋大学, 経済学研究科, 特任教授 (40262399)
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研究分担者 |
根本 二郎 名古屋大学, アジア共創教育研究機構(経済), 教授 (20180705)
雷 蕾 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 海外研究員 (20749402)
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 特任教授 (30173305)
孟 渤 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (70450541)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | ゴローバルバリューチェン / COVID-19 / 多地域産業連関モデル / 環境アセスメント / 中国リスク / サプライチェーンの可視化 / ネットワーク分析 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
2021年では予定の通り以下の研究を行った。①産業連関表の最新版を入手し、GVC研究のためのデータバーズ及び日本の産業構造と生産性に関するJIPデータを更新した。②コロナ禍対策による都市閉鎖と国際物流の中断などの影響で自動車・半導体・エネルギーをケースにし、GVCのリスク評価と安全保障貿易管理の経済貿易投資への影響を研究し、OECD, 国連UNIDOおよびジェトロアジア経済研究所のとの連携で科研のテーマにした国際シンポジュウム(第31回国際経済政策研究センター・キタン国際学術シンポジウムと共催)を開催し、研究結果を披露した。③初めて国際サービス貿易の炭素漏れを推計し、その要因を分析した。④米中貿易戦争によるGVC構造の変化及びその日本経済への影響の試算を行った。⑤人工知能AIの手法を利用し、気候変動による海面上昇の日本企業立地変化シミュレーションを行い、そのGVCへの影響を分析した。⑥中国のBig Dataである企業間取引情報を収集・整理し、グラビティモデルによる中国時系列省間の産業連関表の推計を行った。また、従来の公表ベースの中国産業連関表と比較し、Big Dataによる作成手法の整合性を検証した。⑦上場企業のデータを利用し、コロナ禍の影響で企業財務状況の変化を分析し、企業の対策を探索した。コロナ禍がグローバルバリューチェーンへの影響に関する論文ビューを行い、アジア経済研究所のDiscussion Paperより掲載された。⑧中国の企業センサス、企業級の環境汚染情報、税関情報、地方官僚の昇進ルートに関するData Mining情報を利用し、地方の汚染と官僚の昇進との関係を検証した。また、中国2000-2019年の時系列データを利用し、炭素削減(気候変動)対策と環境汚染削減対策の相乗効果を分析し、炭素削減対策の効果はより有効という結果を得られ、両政策の融合を薦めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年では、コロナ禍の影響で一部の研究企画が遅れたが概ねに順調に進捗している。 (1)国連・OECD・『中国産業連関表2020年』等によりGVCデータ、Thomson Reutersの上場企業のデータを入手し、GVC研究に必要なデータベースの構築が出来でいる。(2)Nature Earth等の学術誌に十数本の共同論文を発表した。(3)OECD, 国連UNIDOおよびアジア経済研究所との連携で「ポストコロナ時代のグローバル・サプライチェーン再建」を題した国際シンポジュウムを開催し、GVCのリスク評価と安全保障貿易管理の経済貿易投資への影響の研究結果を発表した。1月22日、清華大学・早稲田大学と連携し、「Sino-Japan Carbon Pricing Forum」を開催し、炭素排出権取引市場(ETS)の炭素削減及びGVCの変化による炭素排出のトレンドと日中の経済連携について意見を交わせた。3月25日、北京国際エネルギー倶楽部のワークショップに参加し、「中国のエネルギー転換とエネルギー安全」の講演と政策提案をした。(4)「Global Value Chains Risk and Economic Security」の英語授業・講演を行った。また、国連生物多様性条約昆明会議のイベントとして、ケンブリッジ大学・北京大学・UNDPと連携し、Biodiversity Economicsのパネルディスカッションを行い、世界各国から約102万人が視聴した。(5)企画の一環として、Applied Energyの特集を編集し、一部の研究成果を掲載した。 2021年では本研究の主な問題点は、1)海外の研究協力者との研究は遅れ、現地調査や企業データの収集はできていない。2)米中関係の悪化・ロシアとウクライナとの戦争の影響で予定した日米中を中心としたGVCの分析は、調整の必要性が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)企業間取引ビッグデータに基づくサプライチェーンの可視化分析を行い、ポストコロナ時代のグリーンサプライチェーンの構築を行う。(2)産業連関表を利用して、アジアの国の産業構造・貿易構造の変化を分析し、GVCの再築およびそれによる環境負荷・炭素排出の量を推計する。これにより炭素排出の源泉・構造・要因を分析し、対策を考えていく。(3)米中貿易戦争によるGVCへの短期・長期的影響を分析し、「脱中国化」の現状及び今後の進行状況を分析する。(4)ロシアとウクライナの戦争・対ロシアの経済制裁によるGVCの変化、特にエネルギーサプライチェーンへの影響を分析し、その地政学的変化を検討する。(5)引き続き、Nature Climate Change, Energy Economics, Applied Energy等の学術誌に投稿し、研究の成果を公表する。さらに、エネルギー安全性・米中対立によるGVCの変化などの研究成果をWTO世界貿易機関の報告書に反映する。(6)『カーボンニュートラルの経済学』の本を作成し、経済学の新たな理論を創出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
①予定している中国・イギリス・オーストラリア等の国への出張、データ収集と共同研究を行う。旅費は約300万円。②北京・東京・バンコクでの国際会議の共催に使う出張・会議費など約150万円。③資料収集・研究助言に必要な謝金約80万円。④英語論文翻訳・校正・編集のための費用約50万円。⑤研究成果を本にした出版金約100万円。⑥海外研究協力者の日本への招聘費用約80万円。⑦パソコンおよび周辺機器の費用約40万円。 計:約1000万円。
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