研究課題/領域番号 |
20KK0034
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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研究分担者 |
山口 健介 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任講師 (00435538)
服部 崇 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (30837117) [辞退]
三重野 文晴 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (40272786)
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60636885)
Lim Guanie 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (60931574)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 一帯一路戦略 / 債務の呪い / 東南アジア / 付加価値所得 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
2023年度に公表した主要な研究成果は,学術誌2編,書籍2編(うち章担当4編),学会・シンポジウム・セミナー報告4編(うち国際学会・ワークショップ・セミナー4編,招待講演1編)である. 学術誌の内,ラオスの債務管理に関する研究は,増大するラオスの対外債務の管理可能性と経済影響を検討したもので,結果を第35回AEPR conferenceで報告し,early viewとして出版した(学術誌での出版は2024年度). 書籍出版の内,Energy Policy for Peaceに関しては,序章で途上国のエネルギーアクセスと電荷の進展を概観し,社会経済にプラスの影響をもたらすには地元コミュニティや団体,ビジネスとのパートナーシップが重要となることを述べたうえで,第3章のベトナムの事例分析で中央政府の主導で立案してきた石炭火力発電事業が地元,特に州政府の反対に遭って頓挫しつつあることを明らかにした. 学会報告の内,国家送電網の買収に関する研究報告は,中国国家電網公司(SGCC)のビジネスモデルの国外投資先での適用可能性をフィリピン,ブラジルを事例に分析し,コロンビアで開催された国際研究集会で行った. その他,(1)中国のラオス高速鉄道への投資の経済効果に関する分析結果,(2)中国のフィリピン国家送電網買収のエネルギーシステム転換への影響の分析結果,(3)洋上風力発電の地域社会の移行に及ぼす効果に関する分析結果をそれぞれ学術誌に投稿した(査読中).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の研究進捗は,下記3点に要約される. 項目Aに関して, BRI(一帯一路)をキーワードとしたScopus, Web of Science での文献収集とその体系的レヴューを行い,BRIの学術上の論点を解明した. 項目B(貿易・経済構造分析)に関して,Gravity model を用いた計量経済分析を行い,中国との自由貿易協定は貿易の付加価値を増加させたことを明らかにした.部門別には,中国のラオス高速鉄道投資は,投資環境改善,サービス貿易の自由化,貿易仲介の改善を行えば,ラオス経済に正の効果をもたらすことを,シナリオ分析から明らかにした.次に中国国家電網公司(SGCC)による送電会社買収と超超高圧送電網整備事業参入は,ブラジルでは現地の送配電網整備や電力システム転換の文脈に合致し,フィリピンでは合致せず,その相違が政治的・社会的受容性に影響を及ぼしたことを明らかにした. 項目C(債務・財政の持続性とガバナンス分析)に関して,ラオスの債務管理分析では,対外債務は管理可能な状態にあり,実物経済成長も中期的には影響を受けないこと,しかし金融市場の未発達が政府の債務調達を制約しマクロ経済の不安定化要因となることを明らかにした.またガバナンスの影響に関して,中国のデジタル情報保護規制は,BRI協定を早期に締結した国ほど同様の規制を導入していることを,データを更新して行った差分の差分析により明らかにした.中国企業が開発を主導したマレーシアのクアンタン工業団地とForest City開発事業では,中国市場向け製品と中国投資家向け不動産の開発のために,現地政治家・実業家と結託して事業認可を追求したことが汚職と政治混乱の引き金となったことを明らかにした.他方ラオスの電力部門では,中国との合弁送電会社設立が,政府と国営企業の分離と規制強化をもたらした可能性があることを指摘した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,COVID-19による外出・渡航制限の影響を強く受け,2年間,海外での現地調査や現地研究機関での共同分析を断念せざるを得なくなった.このため,当初計画では2023年度に予定していた研究報告を,East Asian Economic Association(11月)等の国際学会,国際開発学会(11-12月)等の国内学会,国内外のシンポジウムで行う. 同時に,学会報告での指摘事項への対応や,論文作成過程で明らかになった論証不足を補うために追加の調査・分析を行い,学術誌及び英文書籍原稿を完成させ,投稿及び書籍出版提案を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
COCID-19 Pandemicに伴う渡航制限及び現地の状況の変化(研究対象事業の中止,国民世論の変化等),分担者1名の離脱,分担者1名の在学留学により,研究計画の見直しが必要となり,あるいは研究遂行に想定以上に時間を要した.この結果,研究期間を1年間延期した(承認済). 次年度使用額は,主として研究結果公表に必要な追加調査,学会・シンポジウムでの報告,英文校閲や論文投稿料等,成果報告に充当する.
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