研究課題/領域番号 |
20KK0044
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
額賀 美紗子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (60586361)
|
研究分担者 |
金 侖貞 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40464557)
徳永 智子 筑波大学, 人間系, 准教授 (60751287)
高橋 史子 東京大学, 教養学部, 特任講師 (80751544)
布川 あゆみ 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (80799114)
三浦 綾希子 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (90720615)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
キーワード | 移民生徒 / 公教育 / 包摂 / 中等教育 / 国際比較 / 教育機会 / ウェルビーイング |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の三点である。 第一に、都立高校に在籍する移民生徒に関する学校アンケート調査(前年度実施)の分析が終了し、報告書を作成した。全日制・定時制・特別支援学校に分けて都立高校に在籍する移民生徒の現状を明らかにし、教育機会保障のための政策的提言を述べた。報告書は製本・印刷して行政、国会議員、都議会議員、研究者、NPO等に配布するとともに、東京大学学校教育高度化・効果検証センター(CASEER)のHPに掲載した。
第二に、上記のアンケート調査報告書および分析中のインタビューデータにもとづく考察を、国内外の学会およびワークショップで発表した。国内では異文化間教育学会と日本教育学会でグループ報告を行った。UK-Japan Student Conferenceと東京大学―ストックホルム大学交流プログラムでは研究代表者がシンポジストとして登壇し、海外大学の学生も含めたオーディエンスから多様なフィードバックをもらった。また、一般向けには日立財団の多文化共生フォーラム、教養教育高度化機構シンポジウムに登壇し、関連する分野の研究者・実践者とのパネル対談を行った。
第三に、コロナの規制緩和に伴って、3月下旬に韓国調査を実施した。移民生徒の教育にかかわる市民団体、ソウル市役所、ソウル市多文化教育センター、中央多文化教育センター、高麗大学内設置の家庭支援センターを訪問し、充実したインタビュー調査を行うことができた。また、高麗大学に所属する複数の教員と移民政策や移民支援、多様性推進について各国・各大学の状況を共有し、意見交換する貴重な機会を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、さまざまな機会に成果報告を行い、その際に多様な人と交流して関係をつくることができた。都立高校のアンケート調査報告書の内容をもとに市民団体と連携し、東京都教育庁、都議会議員、国会議員と意見交換する機会を複数回もてた。そこでは、都立学校に在籍する外国につながる生徒の現状と課題を指摘し、行政主導による実態調査や外部連携を組み込んだ包括的な支援の必要性、多様な言語・文化を尊重するグローバル市民教育の重要性について提起することができた。また、日立財団のフォーラムをはじめ、学生や一般向けにも調査結果を発信し、フィードバックを得ることができた。
第二に、韓国での現地調査をメンバー全員で実施することができた。3泊4日の短期間ではあったものの、多くの人の協力のおかげで事前の連絡調整が円滑に進み、効率よく調査スケジュールを組めた。事前に韓国の多文化教育を専門とする研究者を招いた学習会を開き、日本の政策や実践との異同を意識しながらインタビューに臨めた。厚みのあるデータを収集できたので、今後の比較考察に役立てたい。また、高麗大学の教員と交流を深められたことも大きな収穫であった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず、都立高校で収集したインタビューデータの整理と分析をすすめ、今年度中に報告書を作成する。報告書の内容を広く公表するとともに、行政や議員との意見交換の機会も設けたいと思う。韓国現地調査のインタビューデータも整理して分析をすすめる必要がある。こちらはワーキングペーパーとしてまとめ、東京大学CASEERのHPに掲載する。
調査としては、都立高校調査を拡充していきたい。都立高校に通う外国につながる生徒の支援にかかわる外部人材-ソーシャルワーカー、多文化共生サポーター、通訳者-にインタビュー調査を実施する。すでにアクセスがあるため、雪だるま式に協力者を増やしていく予定である。また、海外調査としては台湾での現地調査を検討している。台湾も近年ニューカマー移民生徒が増えつつあり、学校現場や教育政策には変化がみられる。日本、韓国、台湾を比較考察しながら、東アジア圏の多文化教育の特徴について考察を行いたい。
さらに、今後も国内外で成果発信を進めていく予定である。特に、英語圏の学会やワークショップには積極的に参加して、関心を共有する研究者とのネットワークを築いていきたい。すでに交流のあるストックホルム大、スタンフォード大、高麗大とは引き続き情報共有や意見交換を継続していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響によって予定していた欧米への海外渡航がキャンセルになり、韓国の現地調査に変更したが、近距離で滞在日数が限られたため費用が予定額ほどかからず、残額が生じた。残額分は、海外の学会での発表や海外調査を今後行う際に使用する予定である。
|