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2023 年度 実施状況報告書

移民・難民の子どもを包摂する文化的に適切な教育と社会統合に関する国際比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0044
研究機関東京大学

研究代表者

額賀 美紗子  東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (60586361)

研究分担者 金 侖貞  東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40464557)
徳永 智子  筑波大学, 人間系, 准教授 (60751287)
高橋 史子  東京大学, 教養学部, 特任講師 (80751544)
布川 あゆみ  東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 准教授 (80799114)
三浦 綾希子  中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (90720615)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2025-03-31
キーワード移民生徒 / 公教育 / 教育保障 / ケア / ウェルビーイング / 中等教育 / 国際比較
研究実績の概要

本年度の研究実績は以下の三点である。
第一に、都立高校に在籍する移民生徒に関する99校の学校アンケート調査と29校のインタビューの分析を統合し、移民生徒に対する教員のまなざしとニーズ把握、進路支援、中退防止、学校外連携の5つの領域に焦点を当てて考察を行った。この結果は、国内外の学会・セミナーや市民団体の研修会で報告した。世界教育学会やオックスフォード大学主催のセミナーでは、これまでの欧米型モデルとは異なる、ケアと教育を融合した多文化教育モデルを日本の実践事例から立ち上げることの可能性を提起した。
第二に、上記調査にもとづき、コロナ下において高校教員が在籍する移民生徒の困難をどのように認識し対応したかを考察し、論文を執筆した。コロナ禍の中で外国につながる生徒たちの教育機会や居場所が縮小・消失していること,それにもかかわらず,その困難がマジョリティの立場にたつ日本人教員の視点からは見えにくく,学校からの支援を十分に受けられていない状況を明らかにした。その一方で,コロナ以前より福祉的な視点からケアを実践していた学校がコロナ禍で生徒の声を拾い,医療や行政のサービスにつないでいく様子も見出された。これらの考察にもとづき、学校教育の中に福祉的ケアを位置づけることの意義と課題について議論を展開した。
第三に、高校における中退予防の実践とそれが移民生徒に及ぼす影響について、インタビューデータにもとづく分析を進めた。高校の適格者主義、個業化された教員文化、ケア実践を鍵概念として、移民生徒の中退を促進・抑制する制度的・文化的文脈について考察し、投稿論文としてまとめた。
第四に、高校のインタビューデータを報告書としてまとめる作業をすすめた。グッドプラクティスの事例を複数まとめ、対象校とやりとりをして承認を得た。移民生徒の教育保障にかかわる実践を分類し、各項目について分析と執筆を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は国内外での研究報告に力を入れた。国内では、異文化間教育学会でのパネル報告および市民団体である多文化共生ネットワーク東京の研修会で講演を行った。後者では研究者、実践者、行政関係者、メディア関係者など多様なステイクホルダーと知り合うことができ、研究ネットワークが広がった。調査結果は複数の新聞やメディアにとりあげられ、特に高校間の支援格差の問題に注目してもらうことができた。
国外では、オックスフォード大学ニッサン研究所のオンラインセミナーと、シンガポールで開催された世界教育学会大会で報告を行った。世界教育学会大会ではシンポジウムとして採択され、フロアとの活発なやりとりができた。報告をきっかけに、National Institute of Educationの研究者と知り合い、今後の研究交流の可能性を検討することができた。
研究報告のほか、インタビューデータを用いた論文も二本まとめることができた。さらに、インタビュー調査の報告書作成に向けて各メンバーの執筆分担を決め、データの整理と執筆を進めた。

今後の研究の推進方策

今年度前半はインタビュー調査の報告書執筆に注力する。報告書の内容を広く公表するとともに、行政や議員、現場の実践者や当事者市民団体との意見交換や交流の機会を持ちたい。
一昨年度末に実施した韓国現地調査のインタビューデータの考察が遅れているので、今年度は計画的に分析と執筆を進めていきたい。
調査としては、都立高校調査を拡充していく予定である。移民生徒の支援にかかわる外部人材-ソーシャルワーカー、多文化共生サポーター、通訳者、夜間中学、NPO等-にインタビュー調査を実施する。すでにアクセスがあるため、スノーボールサンプリングによって協力者を増やしていく予定である。
今後は国内外での調査と成果発信に一層力を入れて励む予定である。特に、韓国、台湾、シンガポールの研究者と連携しながら、アジア型の多文化教育モデルについて検討を続けたい。交流のあるストックホルム大、スタンフォード大、高麗大の研究者とは引き続き情報共有や意見交換を継続し、共同研究の可能性を探っていく。

次年度使用額が生じた理由

高校インタビューの報告書の執筆が後回しになり、その印刷費として計上していた予算を使用しなかったため。今年度は報告書が完成する見込みであり、印刷費として持ち越した予算を消化する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 「ドイツにおける宗教科とイスラーム」2024

    • 著者名/発表者名
      布川あゆみ
    • 雑誌名

      宗教教育

      巻: 97 ページ: 12-15

  • [雑誌論文] コロナ下の外国につながる高校生に対する教員の認識と実践 -都立高校を対象にしたアンケートとインタビュー調査から-2023

    • 著者名/発表者名
      額賀美紗子・金侖貞
    • 雑誌名

      東京大学大学院教育学研究科附属 学校教育高度化・効果検証センター(CASEER) 研究紀要

      巻: 8 ページ: 237-257

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「日系企業が自分に合わないと思う」: 南米系移民第二世代の日本での就職活動経験」2023

    • 著者名/発表者名
      髙橋史子・額賀美紗子・徳永智子
    • 雑誌名

      異文化間教育

      巻: 58 ページ: 132-144

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 移民の若者との協働から学校を問う―参加型アクションリサーチの試み―」2023

    • 著者名/発表者名
      徳永智子
    • 雑誌名

      教育学年報

      巻: 14 ページ: 57-79

    • 査読あり
  • [学会発表] Reconstructing Teachers’ Perceptions of Immigrant Students in Japan: The Importance of Dialogues in Promoting Education for Social Justice2023

    • 著者名/発表者名
      Misako Nukaga, Ayumi Fukaw
    • 学会等名
      World Educational Research Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Diversity and Educational Equity in Japanese Schools: Developing a Culturally Responsive Pedagogy for Immigrant Students2023

    • 著者名/発表者名
      Nukaga, Misako, Ayumi Fukawa, Fumiko Takahashi, Akiko Miura, Tomoko Tokunaga, YunJeong Kim
    • 学会等名
      World Educational Research Association
    • 国際学会
  • [学会発表] How do Japanese public high schools respond to immigrant students? Challenges of diversity and educational equity in Tokyo2023

    • 著者名/発表者名
      Nukaga, Misako, Fumiko Takahashi, Tomoko Tokunaga,Akiko Miura, Ayumi Fukawa, Yunjeong Kim
    • 学会等名
      Nissan Seminar, Nissan Institute of Japanese Studies, Oxford University
    • 国際学会
  • [学会発表] 移民生徒の教育機会を阻む重層的バリアと変革可能性 ー都立高校30校におけるインタビュー調査をもとにー2023

    • 著者名/発表者名
      額賀美紗子, 金侖貞, 髙橋史子, 三浦綾希子, 徳永智子, 角田仁
    • 学会等名
      異文化間教育学会第44回大会
  • [学会発表] 都立高校における外国につながる生徒の教育保障の現状と課題 -アンケートとインタビューの調査から-2023

    • 著者名/発表者名
      額賀美紗子, 布川あゆみ, 三浦綾希子, 徳永智子, 金侖貞
    • 学会等名
      多文化共生ネットワーク東京 研修会
  • [図書] 国際理解教育と多文化教育のまなざし (分担執筆:金侖貞「韓国多文化教育の現況と課題‐公正と平等をめざす教育へ‐」)2023

    • 著者名/発表者名
      森茂 岳雄、川﨑 誠司、桐谷 正信、中山 京子
    • 総ページ数
      480
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750355719
  • [図書] 外国につながる若者とつくる多文化共生の未来2023

    • 著者名/発表者名
      徳永 智子、角田 仁、海老原 周子
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750355511

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公開日: 2024-12-25  

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