研究課題/領域番号 |
20KK0055
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70347079)
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研究分担者 |
津田 裕之 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (70847863)
星 玲子 (柴玲子) 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (90291921)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 美 / 感情的覚醒度 / 魅力 / 反応時間 / ウェブ実験 |
研究実績の概要 |
本研究では,鑑賞者が経験する美的感情に関する心理的基盤と脳内基盤の双方について,脳機能計測や心理学的実験を用いた研究,脳活動に対する深層学習をもとに美的感情を推定する研究,美術作品の様々な画像的特徴から深層学習を用いて印象評価を推定評価する研究を統合し,これまでの美学理論や美術史の系譜を再考することを目的としている。2020年度は,過去の美学理論および美術史の議論の精査をしつつ,オンラインでのウェブ実験を用いて,美術作品に対する美しさと覚醒度の評価を行い,2軸4象限に当てはまる絵画画像を選定するとともに,脳機能測定に関する予備的検討を行うことを予定していた。オンライン実験では,まず実験1として,肖像画,風景画,抽象画それぞれ200枚の計600画像に対する美しさの評定と感情的覚醒度に関する評定実験を120名の実験参加者を対象として行った。しかし,当初予定していたとおりの美しさと覚醒度との2軸4象限への当てはまりは予想以上に悪く,むしろ両者の評定間が非常に強い線形相関を示すことが明らかになった。さらに,調査会社パネル約800名を対象として実験1の中で提示した肖像画の中から描かれた男女それぞれ50枚,計100画像を用いて,絵画として美しさを評定する課題と,描かれている人物の魅力の度合いを評定する課題とを実施し,それらの評定間の非常に高い相関と,いくつかの実験参加者の特性に応じた評価の在り方について明らかにすることができた。今後は詳細な分析を行うとともに,深層学習を行う研究へと移行させる予定である。また,2020年度内に,fMRIを用いた予備実験も数名を対象としてであるが,実施することができ,本実験への前に実験統制や反応に関する予備検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の実施予定内容としては,(1) 過去の美学理論および美術史の議論の精査, (2) オンラインでのウェブ実験を用いた美しさと覚醒度の評定をもとにした美的感情に関する検討,(3) fMRI計測の予備実験であったが,(1)については2021年度以降も継続的に理論的研究を行っていく予定であり,(2)については2つのオンライン実験を行うことができた。(3)予備実験についても,数名であるが実施できた。そのため,おおむね予定の研究を実施することができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,まず,2020年度に実施したオンライン実験の研究結果を詳細に分析し,論文化を行う。また,美しさと覚醒度の評価に伴う脳活動の計測を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験的研究により行い,同一画像に対する美しさと覚醒度の2つの評定時の脳活動データを基にした美しさと覚醒度のマッピング行い,Web実験と比較する。余裕があれば,Web調査によって美しさと覚醒度の評価,崇高さや悲しみなどの多様な感情の評価を行い,画像認識の深層学習の設計を行う。当初は,共同研究機関先であるロンドン大学へ研究代表者らが出向き,脳機能計測のための予備検討および心理学実験の論文執筆とそのための議論を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,様子を見ながら渡航を計画する。しかし,渡航できなくても,オンラインによるコミュニケーションにより,英国の研究者との日常的な議論や作業を通して国際共同研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,出張による旅費の使用がなかったことに加え,同じくコロナの状況により実験実施のための研究支援員を雇用することができなかったが,卒業論文の研究とタイアップして,オンライン実験を実施することができたために人件費の支出が少なくなったから。 fMRI実験のバックアップ研究として,脳波研究を遂行する予定があるため,実験参加者への謝金,その消耗品等に使用する計画である。また,視線計測実験等も進める予定でり,その実験参加者謝金,消耗品の購入にも使用する。
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