研究課題/領域番号 |
20KK0060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90302760)
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研究分担者 |
須波 圭史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 学術専門職員 (80886911)
浦井 瑞紀 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 学術専門職員 (20886915)
鹿野田 一司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20194946)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | 核磁気共鳴 / ディラック電子系 / ワイル電子系 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたり、有機ディラック・ワイル電子系での磁場中物性をNMR測定を中心に行った。国内では計画に従い主に定常磁場下での実験を行った。 単一成分分子性導体M(dmdt)2塩はノーダルディラックラインの存在が理論的に指摘されている。前年度M=Ni塩の測定を開始したが、本年度はこれに加えて同様にノーダルディラックラインをもつM=Pt塩の測定を開始した。粉末試料を用いた13C NMRの結果は、両塩とも、スピン格子緩和率とスピンシフトの高温側での振る舞いはディラックコーンで期待されるものと概ね矛盾しない。一方、低温でスピン格子緩和率の温度依存性にピークが見られた。そこで、このピークの振る舞いの起源を探るため、磁場依存性をみるべくM=Niを中心に様々な定常磁場下での測定を行った。その結果、スピン格子緩和率の絶対値は磁場依存性は見られるものの、ピークを取る温度はそれほど磁場依存していないことが分かった。低温ではM=Ni塩の緩和率よりもPt塩の方が大きいが、特定の温度でPt塩でもピークを持つ。 新型コロナウィルスの流行が世界的に続き、加えて流行の時期が国内の県単位だけではなく、世界的にも異なっていた。パルス強磁場下NMR測定は海外(ドイツ)で計画していたが、このような事情により実験実施は困難な状況であった。そこで、国内の実験施設(東京大学 物性研)においてパルス磁場を用いた強磁場下での(NMR測定以外の)物性研究にも取組むことにより、強磁場での測定ポイントを掴むように努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、国内、国外でそれぞれ入国制限などの措置が設けられた。加えて、ウクライナを中心とした戦闘状況もあり、海外での実験に関しては実施が難しい状況にあり、パルス強磁場下NMR測定に遅れが見られる。 一方で国内での研究に関しては定常磁場を用いて勧めており、単一成分分子性導体の核磁気共鳴実験で、低温での緩和率のピークなど予想外の結果もえられた。パルス強磁場に関してもNMR以外の物性測定をおこなうなど順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
単一成分分子性導体は低温でのスピン格子緩和時間の磁場依存性を国内では定常磁場の範囲をより低磁場領域に拡大して測定をすすめる。ディラック電子系関連物質、a-(BETS)2I3およびNi(hfdt)2に関しては、最近、低温で磁気秩序の可能性が指摘された。磁気秩序相の有無をNMR測定を中心に明らかにしていく。 パルス磁場を用いた実験はNMR以外では国内施設の利用を、NMRはドイツでの実験を行う。 ただし、新型コロナウィルスの流行は依然続いていること、ウクライナなどの戦争もあるため、最初から長期を行わず、短期間での派遣からはじめる。 加えて国際会議などにも参加し成果の発信をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料や超伝導磁石を冷却するため実験に使用した寒剤の価格が変化したため残額が生じた。加えて、海外(ドイツ)での実験、および国際会議の参加など旅費を計上していた。実際には、新型コロナウィルスの流行により、渡航が難しいことや、会議が中止、オンライン開催などとなったため。 残額は、国内実験での寒剤代と国際会議や海外での実験の旅費に当てる。
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