研究分担者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
常盤 欣文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30737458)
北川 俊作 京都大学, 理学研究科, 助教 (50722211)
藤森 伸一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (70343936)
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研究実績の概要 |
核燃料としての応用が知られるウランは, 次世代超伝導の基礎研究においても極めて重要な戦略元素である. ウランを含む化合物では, 強磁性超伝導, 磁場誘起超伝導, 超伝導多重相など, 新奇な超伝導現象が次々と発見されており, その背景には従来の超伝導とは異なる, スピン三重項超伝導という新しい超伝導の物理が広がっている. 本研究は試料の相互提供を軸とした新たな共同研究の枠組みを確立することで, スピン三重項超伝導の機構解明に向けた国際研究を加速させることを目的としている. 研究の実施においては, 特にウラン系超伝導体URhGe, UCoGe, UTe2に焦点を当て, スピン三重項超伝導に起因した新奇超伝導現象について, その起源となる電子状態の特徴を多角的プローブを用いて微視的観点から探っている. 研究の初年度となる令和2年度は, UTe2の研究が大きく進展した. 一昨年に発見されたこの新しい強磁性超伝導体は, これまでの超伝導体にはない特異な性質を数多く持ち, 大きな注目を集めている. 我々の最も顕著な成果として, UTe2の圧力下の超伝導状態の解明が挙げられる. 磁化困難軸のb軸に磁場を加えて圧力を加えていくと, 上部臨界磁場がメタ磁性転移磁場とともに減少することを見出した. 一方、容易軸方向では, 低温高磁場領域の急激な上部臨界磁場の上昇が多重超伝導相に起因することを明らかにした. 本年度はさらに海外高磁場施設でのNMR測定の前段階として, UTe2の超伝導状態のNMR測定を行った. b軸磁場, c軸磁場のスピン磁化率の測定から, UTe2が磁場方向によって超伝導スピンの応答が異なる特異なスピン三重項超伝導体であることを明らかにした. 以上の成果を原著論文として出版し, さらにオンラインの国際会議及び国内学会等において発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により, 海外の研究施設を利用した実験の実施だ困難な状況にある. しかしその分, 国内の実験施設を戦略的に活用することで研究を効率的に進めている. 強磁場実験に関しては25テスラまでの測定を東北大学金属材料研究所の強磁場施設で実施した. 今後, 海外施設において, さらに高磁場での実験を行う準備が整ってきている. また, 海外実験で用いる純良単結晶育成も現地の協力研究者の協力の下, 順調に進んでいる. 海外の共同研究先とオンラインで複数回ミーティングを行い, 研究状況に関して綿密な情報交換を行うとともに, 論文執筆も共同で行っている.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により, 現在は研究者の国際的な移動が困難となっているが, 海外の先端研究施設(LNCMI, CEA等)は稼働を続けており, 外部ユーザーも受け入れている. 日本からの渡航が可能となり次第, 研究代表者及び研究分担者がそれらの施設に赴き, UTe2の単結晶育成と物性測定を行う. 国内の研究についてはこれまで通り, 東北大強磁場施設やSPring-8等を最大限に活用して研究を行う. 特に強磁場下の磁場誘起超伝導と物質内部の磁気的揺らぎの関係を, NMR等の微視的測定手法によって明らかにする. またスピン三重項超伝導の総括的な理解を進めるため, UTe2以外のスピン三重項超伝導体URhGe, UCoGe等についても実験研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により, 令和2年度に予定していた海外施設での共同実験が延期になったこと及び共同実験の進捗状況を考慮し, 実験に必要な物品の購入を次年度以降に延期したことにより次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,令和3年度分助成金と合わせて, 共同実験再開時の実験用物品の購入及び海外出張等に係る経費として使用する.
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