研究課題
宇宙空間に広く存在する高エネルギー粒子、宇宙線は、希薄なプラズマ中の衝撃波を介して加速されると考えられている。様々な分野で異るアプローチから研究されており、例えば天文学では、遠方の天体を撮像することで衝撃波のマクロな構造を捉える。しかし、マクロな撮像からはプラズマのスケールのミクロな情報が得られないという問題があった。この様な直接観測できない宇宙の現象を実験室で模擬するのが実験室宇宙物理であり、本研究では、台湾国立中央大学の多数ビーム高繰り返しの高強度レーザーであるNCU 100TWレーザーを用いて、非相対論から相対論、および量子力学的効果が本質的な領域まで対象を広げ、衝撃波のダイナミクスと粒子加速を研究する。初年度は、主要な計測器の基礎となる理論の確立、数値計算を用いたその証明、さらにそれを用いた計測器を含む実験のデザインを行なった。トムソン散乱を用いた二流体プラズマの計測のため、非平衡系のトムソン散乱理論を構築し、低強度プローブレーザーを用いた計測に応用予定である。これまで協動トムソン散乱電子項について、非平衡系の理論とシミュレーション、および実験による検証を行なってきた。現在はイオン項についての非平衡系の理論の構築と数値シミュレーションを用い、理論の妥当性の評価を行なっている。同時に高強度短パルスレーザーを用いたトムソン散乱も国内のレーザーを用いて開発している。これまでの理論は、時間の定常性が仮定されているめ、時間に依存する理論を展開する必要がある。イオンを用いた衝撃波の電磁場計測ため、粒子コードを用いたシミュレーションと、イオン検出器を高効率化・高精度化するため、高速高分解能のデジタルマイクロスコープを用いたデータの取得、さらにAIを用いた解析手法を開発している。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では、台湾国立中央大学での実験と打合せを予定していたが、新型コロナウィルスの影響で渡航が難しい状況である。海外の施設を使った実験による国際共同研究の実施には、まさに試練の時である。1年前の時点で、1年後は状況が改善しているだろうとの楽観的な見方もあったが、現状では第2波、3波、4波と治るどころか、感染の山も大きくなってきている。状況が改善した場合の現地での実験も準備しつつ、理論・シミュレーションやAIを使った実験データの処理、計測器の開発、さらに国内のレーザーを用いた要素実験と大型レーザーを用いた実験を行なっている。渡航制限を除けば、プロジェクトは順調に推移している。
上に述べたように、台湾国立中央大学の多数ビーム高繰り返しレーザーを用いた実験が、本研究の肝であるが、コロナウィルスの状況から先行きは依然として不透明である。国内の小規模のレーザーを用いた要素実験を行いつつ、理論・シミュレーションによるその検証と最適化、またAIを用いたイオン計測器の高速化と高精度化、さらにそれらを用いたNCUでの実験のデザインとセットアップを進める。また、大型装置を用いた実験についても、今年度から来年度にかけて行う予定である。
新型コロナウィルスの影響で、予定していた台湾国立中央大学での実験・打合せが行えなかったため。渡航制限が解除され次第、台湾での実験を遂行するが、状況が改善しない場合は、国内での要素実験に切り替える。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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