研究課題/領域番号 |
20KK0064
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蔵満 康浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70456929)
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研究分担者 |
松清 修一 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (00380709)
岩本 昌倫 九州大学, 総合理工学研究院, 特別研究員(PD) (00888810)
福田 祐仁 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 上席研究員 (30311327)
田中 周太 青山学院大学, 理工学部, 助教 (50726841)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 無衝突衝撃波 / 高強度レーザー / 航跡場 / イオン加速 / トムソン散乱 / コンプトン散乱 |
研究実績の概要 |
宇宙空間に広く存在する高エネルギー粒子、宇宙線は、希薄なプラズマ中の衝撃波を介して加速・生成されると考えられており、様々な分野で異なったアプローチから研究されている。例えば、天文学では、遠方の天体を撮像することで衝撃波の構造を捉えるが、プラズマのスケールのミクロな情報が得られないという問題があった。この様な宇宙の現象を実験室で模擬するのが実験室宇宙物理であり、本研究では、台湾国立中央大学の多数ビーム高繰り返しの高強度レーザーであるNCU 100TWレーザーを用いて非相対論から相対論および量子力学的効果が本質的な領域まで対象を広げ、衝撃波のダイナミクスと粒子加速を研究する。 2021年度も引き続きコロナの影響で台湾への渡航が制限されているため、主要な計測器の基礎となる理論の確立、数値計算を用いたその証明、さらに国内の高強度レーザーを用いた計測器開発と実験を行なった。トムソン散乱を用いた衝撃波上流の二流体プラズマの計測のため、非平衡系のトムソン散乱理論を構築し、粒子シミュレーションによる検証を行なった。これまで協動トムソン散乱電子項についての非平衡系の理論とシミュレーションを発展させ、イオン項まで拡張した。同時に高強度短パルスレーザーを用いたトムソン散乱と誘導コンプトン散乱についても国内のレーザーを用いて実験を実施し、航跡場のイメージングと分光計測を行なった。イオンを用いた衝撃波の電磁場計測ため、粒子コードを用いたシミュレーションと、国内のレーザーを用いたイオン加速実験を行なった。イオン検出器を高効率化・高精度化するため、高速高分解能の顕微鏡とAIを用いた解析手法を開発し、高時間分解のイオンラジオグラフに展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼロコロナ政策をとっている台湾への渡航はいまだに難しい状況である。状況が改善した場合の現地での実験も用意しつつ、理論・シミュレーションやAIを使った実験データの処理、計測器の開発、されに国内のレーザーを用いた要素実験と大型レーザーを用いた実験を行なっている。NCU側のポスドク研究者で航跡場加速のシミュレーションを担当してくれているLiu氏が、台湾国立成功大学のプラズマ研究所に助教として採用され、共同研究も広がりを見せている。現在、台湾側で国際共同研究の予算申請をおこなっている。また、NCU側のポスドク研究者のBolouki氏は現在チェコに移動となったが、本研究テーマの大きな目的である、小型装置での成果を日本の大型装置にフィードバックするという目的のため、阪大レーザー研の大型装置に共同で実験提案を出しており、PIとして実験の準備を行なっている。渡航制限を除けば、プロジェクトは順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
台湾国立中央大学の多数ビーム高繰り返し高強度レーザーを用いた実験が、本研究の肝であるが、コロナウィルスの状況から先行きは依然として不透明である。世界的に渡航制限が緩和されているが、台湾は高いレベルで水際対策と国内の感染状況を制御できており、2022年度も隔離が継続する可能性が高い。国内の高繰り返し高強度レーザーを用いた要素実験を行いつつ、理論・シミュレーションによるその検証と最適化、またAIを用いたイオン計測器の高速化と高精度化を行い、国内の大型装置での実験を行なっていく予定である。渡航制限がなくれば、大型装置と要素実験の結果を台湾での実験に生かす方向で準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、計画していた台湾現地での研究が不可能になり未使用が生じた。代替策としてオンライン活用での議論を進めているが、状況が許せば2022年度は現地での議論と実験を行う計画であり、未使用額はこの旅費及び関連経費に充てる予定である。
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