研究課題/領域番号 |
20KK0068
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
増田 孝彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (90733543)
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研究分担者 |
吉村 浩司 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (50272464)
植竹 智 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (80514778)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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キーワード | 冷却分子 / 電気双極子能率 / 光センサ |
研究実績の概要 |
冷却ThO分子を用いた電気双極子能率探索の感度向上のための光検出器の開発では、基礎設計が完了し量産プロセスを開始することができた。以下に主だった進展を述べる。 1. 16channelをアナログサムする回路系の設計が完了した。2. 真空チェンバの温度サイクルによる光学窓接着部の剥離が確認された。この解決のため、接着部の設計変更、および接着剤の再選定を行い、60度程度までの温度上昇では剥離しないよう改善した。さらにインターロック機構の導入で、そもそもチェンバに温度サイクルが起こらないように対策した。3. 本実験ではミリ秒程度のパルス信号が頻度50Hzで発生するが、それによるバイアス電圧の変動と信号ベースラインの変動が確認された。バイアス印加に用いる電源を再選定しバイアス電圧の変動を抑制、バイアス回路を読み出し回路の調整で信号ベースラインの変動を緩和し問題ないレベルまで抑え込むことができた。4. 線形性、ノイズ、ダークカウント、冷却性能などはこれまでの設計で問題ないことを確認しており、本年度もそれを再確認している。5. 2021年8-9月に米国に試作機を持参し、実際に冷却ThO分子ビームの蛍光観測を実施した。従来用いていた光電子増倍管に比べ検出光量が2.7~3倍程度に増加しており、本研究開発の動機である検出光量の増加を確認した。 以上のプロセスを経て基礎設計開発は終了し、2021年末から量産体制に移行することができた。量産プロセスは次年度まで継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
信号の読み出しに16チャンネルをアナログサムする方式を採用したことで、ノイズやベースラインの変動がシビアになりその対策に手間取ったが、各種周辺回路の最適化により問題ないレベルに抑え込むことができ、大きな仕様変更なく開発を進めることができた。その他開発中に判明した問題点も致命的なものはなく、その都度の設計変更対応で対処できている。 コロナ禍ではあったが、米国出張も行い現地での性能評価試験も実施することができた。 当初本年度中に量産を開始する計画を立てており、実際の進捗もそれに合致していることから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
徐々に渡航しやすい環境が戻ってきており、本年度は複数回現地滞在が可能になるとの見込みのもと、今後の研究の推進方策を立てている。具体的には、本実験で同時稼働させるための制御系(ハード、ソフト含む)の構築を国内で行い、適宜現地に赴き据付や動作試験を行う。現地共同研究者の開発している真空装置、冷却分子ビーム、分子レンズ等と組み合わせる試験は本年度に行う予定である。DAQやSlow monitoring system等の整備も進め、本年度内には本実験を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と支出が異なっているが、全体としての研究計画自体に変更はなく、本年度も当初予定通りの計画を進 めていく。
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