研究課題/領域番号 |
20KK0071
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
中嶋 大 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (70570670)
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研究分担者 |
野田 博文 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (50725900)
信川 久実子 近畿大学, 理工学部, 講師 (60815687)
松本 浩典 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (90311365)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | X線 / 天文学 / 衛星搭載機器 |
研究実績の概要 |
日独の共同研究により、将来の大有効面積X線望遠鏡の焦点面検出器として、高速低雑音X線撮像分光検出器を開発することが本研究の最終目的である。そのために、独マックスプランク地球外物理学研究所(MPE)の研究者が中心となりアクティブピクセルセンサDepFETあるいは高速低雑音デバイスPNCCDを開発し、並行して我々が左記センサに対応した電源回路および駆動・読み出し回路を開発する。 2022年度は、PNCCDを含むX線イメージャの信号処理を行うことが出来るバックエンド回路ロジックを開発した。1024(1k)あるいは2048(2k)ピクセル四方のイメージセンサを最大50fps(frame per second)の頻度で撮像し、各画像中に含まれる信号電荷を検出し、その信号の座標情報、検出した時刻情報、さらに信号電荷量に比例した信号波高値を記録する。これらの機能を、FPGAとCPUが一体となったSoC (System on chip)に実装した。SoCを実装したバックエンド回路基板と、X線イメージャの例としてCMOSセンサを用いたフロントエンド基板を接続し、X線イメージングカメラを製作した。機能性能を確認するため、単色のX線を照射して撮像分高性能を確認した。結果として、6keVのX線に対するエネルギー分解能が室温のCMOSで250eV(FWHM)という結果を得た。センサを冷却していないために暗電流が高く、そのため既存のX線天文衛星よりもエネルギー分解能は高いが、50fpsという、既存の衛星搭載CCDカメラに対しておよそ200倍の速度で撮像を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツMPEとの協力関係により、各研究機関の分担部分の開発が進められている。ただし、当初想定していたDepFETだけでなく、PNCCDやCMOSといった他タイプのセンサでも十分に優れた科学観測が可能であることが判明した。そのため、日本側の開発するバックエンド回路も、特定のセンサに特化した回路部分ではなく、汎用的なロジックおよびソフトウェアの開発を先行させた。ロジック・ソフトウェアの設計および製作については完了し、CMOSセンサを用いた動作実績まで進んだことにより、当初想定していた計画をおおよそ遅滞なく進行させていると判断する。一方で、特定のセンサに固有のフロントエンド回路部分については、CMOSセンサ以外に対応することが現時点ではできていない。フロントエンド回路については、次年度以降、ドイツ側との議論によってどのセンサを採用するかを決定した後に開発に着手する必要がある。 またドイツにおいて開発が進められているセンサ自体については、MPE自体だけでなく、MPEと協力してセンサを製作しているPNdetector社とも連携してカメラ開発を進めることの重要性が新たに認識された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に開発したバックエンド回路については、そのロジックおよびソフトウェアの大部分が、複数のセンサに対応することが可能な機能であるが、一部でCMOSセンサに特化したロジック部分がある。当該部分については、今後PNCCDやdepFETなどに対応したロジックを開発する。 また、バックエンド回路は衛星搭載時に、カメラボディとは異なる位置に搭載されるため、放射線シールドの設計も同一ではない。そのため、要求される放射線耐性も衛星によって大きく異なる。我々は今後、バックエンド回路に対する放射線損傷試験を行い、耐性を評価する。具体的には、トータルドーズ効果に対してはプロトンを、シングルイベント効果に対しては重粒子線を照射し、反応を測定する。耐性が弱い場合には、シールドの再設計や運用での対処が必要になるため、早期に評価することが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発したX線イメージセンサ用電源電圧生成回路、およびバックエンド処理回路の日独共同評価試験について、対面での実施が出来ず、試験準備関連の物品購入などが進んでいない。来年度以降に行うこととしたため、年度使用額が発生した。
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