研究課題/領域番号 |
20KK0074
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土屋 史紀 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10302077)
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研究分担者 |
古賀 亮一 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (10889190)
木村 智樹 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50578804)
村上 豪 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (50734026)
吉岡 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70637131)
垰 千尋 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (80552562)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 木星磁気圏 / エウロパ / ガニメデ / イオ / 氷天体 / 地下海 / 生命環境 / オーロラ |
研究実績の概要 |
木星や土星の氷衛星は地下海を持ち、生命存在可能環境を持つ可能性が指摘されている。本研究は、木星磁気圏の高温プラズマと氷衛星の相互作用に注目し地下海の探査を試みる。氷衛星の地下海物質は地殻活動により噴出し表層に堆積する。堆積物に磁気圏の高温プラズマが衝突し希薄大気が形成される。飛翔体観測に基づく大気分布と変動の解明から衛星の内部構造と環境を制約することを研究目的とする。2020年度は以下の5点の研究を実施した。 (1) 木星磁気圏の高温プラズマの成因を明らかにするため、イオンが放射する紫外線発光スペクトルからプラズマ状態を診断する解析手法を、木星内部磁気圏で高温電子が突発的に増大する現象に適用した。時間スケールの短い現象に適用できることを確認し、紫外線宇宙望遠鏡「ひさき」の観測を用いた高温プラズマ生成の研究に目途をつけた。 (2) 欧州の国際氷衛星探査計画JUICEに日本から提供する電波観測装置を用いて、氷衛星の地下海物質の噴出により生じる電離ガスプルームの観測シミュレーションを開始した。木星から放射された電磁波が電離ガスにより屈折を受ける光線解析の手法を開発した。 (3)氷衛星から吹き出すプルームと大気を観測する日本の次世代紫外線望遠鏡の計画提案をJAXA宇宙科学研究所に対して申請し、計画検討ワーキンググループ(LAPYUTA計画)を設立した。望遠鏡の概念設計図の製作を行った。 (4)LAPYUTA計画の要素技術開発の一つに分光素子がある。紫外線用コンケーブ回折格子(VM200, 1200LPM)購入し、波長範囲25-300nmの分光システムの一部を構築した。 (5)氷衛星表層と宇宙空間の相互作用を再現する室内実験のため、分光器(Oceanoptics MAYA2000PRO)を購入し、表層模擬サンプルの変性を定量化する分光システムの開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンラインによる議論と、「研究実績の概要」に記述した5項目の研究遂行順を進めた。この5項目の実施により、次年度以降に本研究を進めるための良い準備ができたと判断している。2020年度は、コロナ禍のために国外に出向いて海外の研究者との共同研究を進めることは困難な状況であったが、本研究の現在までの進捗状況としては、順調に進展していると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
国際共同研究を加速させるため、2021年度は研究代表者の土屋が国際宇宙科学研究所(スイス)を訪問し、欧州の研究協力者と研究実施計画の具体化の相談を行う予定である。また、分担者とともに米国、フランス、スウェーデンの研究者と共同で、以下の研究実施計画を進める。 (1)紫外線宇宙望遠鏡「ひさき」が観測したプラズマの分光スペクトル情報に対してプラズマ診断手法を適用し、衛星イオから氷衛星(エウロパ、ガニメデ)に渡って広がる木星内部磁気圏のプラズマ中の高温電子量を導出する。 (2)米国の研究協力者(Ebert、Clarke)と共同で、衛星イオから氷衛星の軌道に渡る領域の電子温度・密度をJuno木星探査機の粒子観測から導出する。この結果に基づいてプラズマ診断手法の検証と改良を行うとともに、高温電子の起源をデータ解析結果とモデルから考察する。 (3)参画している欧州の木星氷衛星探査計画JUICEについて、フランスの研究協力者と共同で、木星電波を用いたパッシブレーダーにより氷衛星の電離大気を観測する手法を開発する。その検討結果を過去に行われたGalileo探査機のデータと比較して妥当性を検証するとともに、JUICE探査機のオンボードソフトウェアの仕様に反映する。 (4)日本の次世代紫外線望遠鏡計画LAPYUTAの要素技術開発(分光器、検出器、望遠鏡)を継続する。2020年度に購入した回折格子に既存の真空チャンバおよび光源と組み合わせることで,飛翔体搭載機器の感度および波長校正システムを完成させる。また、氷衛星大気の形成過程の解明に必要な観測データの解析手法を、ハッブル宇宙望遠鏡で用いられた解析手法を参考に開発する。解析手法の開発はスウェーデンの協力者とともに進める。 (5)プラズマと氷衛星表層の相互作用を研究するための室内実験設備の準備と実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために出張を控えざるを得ない状況となったため、次年度使用額が発生した。来年度に紫外分光器の開発にかかる出張旅費として使用する。
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