研究課題/領域番号 |
20KK0076
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
石川 尚人 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (30202964)
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研究分担者 |
加藤 千恵 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD) (00828478)
東野 伸一郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40243901)
吉村 令慧 京都大学, 防災研究所, 教授 (50346061)
望月 伸竜 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60422549)
加々島 慎一 山形大学, 理学部, 准教授 (70361243)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋底拡大 / 磁気異常 / 航空磁気探査 / 無人飛行機 |
研究実績の概要 |
本調査研究の開始に際し研究グループ内で研究計画を再検討して,過去100万年間に拡大形成したTendaho Graben、近年拡大現象があったDubbahu-Manda Hararo Riftを優先的に研究することにした。今年度は分担に従って,まずは研究対象地域で本研究グループがこれまで実施した調査で得ている地球電磁気学的データ(航空・陸上磁気探査,MT探査)及び採取岩石試料の解析を進め,22年度に実施予定の航空磁気探査に導入する無人小型飛行機の開発に着手した。2021年3月にリモートにて研究集会を開催し,既存データ・試料の解析と機体開発の状況の確認,解析結果の議論,今後の研究計画の具体的検討を行った。 今年度の主たる成果は以下の通りである。2019年度にTendaho Grabenで実施した幅約80km のGrabenの拡大方向に横断する測線上でのMT探査のデータ解析から,地下20kmまでの暫定的な比抵抗構造を構築した。その構造には,東または西傾斜の構造区分とGraben中央部に地下深部からのびる幅約10kmの低比抵抗帯(高温域-熱源)の存在が示唆された。同じ測線上での陸上及び無人飛行機による磁気探査から得られた磁気異常分布の解析では,Graben中央部に幅約10kmの正帯磁域,その両側に逆帯磁域があることが示唆されていることから,Tendaho Grabenの中央部を軸として拡大現象が起きたことが明らかになってきた。既存の溶岩試料の古地磁気極性解析が完了し,Graben中央の幅約40kmが正磁極期の溶岩であることわかった。これは地下の磁化構造から示唆される正磁極期の幅より大きい。正磁極期の採取溶岩の化学組成分析の結果,Graben内の位置による系統的な変化が認められないことを加味すると,地表では拡大軸以外の多点で溶岩の噴出があった可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時の計画では,本研究の開始年度に当たり海外研究協力者を招聘して対面で研究集会を開催することにしていたが,新型コロナウィルスの影響により,海外研究者の招聘は取りやめ,年度末に国内の研究分担者・研究協力者を招集して集会は行うことで,本研究を開始した。結局は感染状況が改善せず,リモートによる研究集会となったが,1日をかけて既存データ・試料に対する解析状況の確認と解析結果の議論ができ,調査対象地域の研究状況の情報共有ができた。この研究集会を目処に既存の観測データ,採取試料の解析を分担に従って進めることができた。無人飛行機の開発は,これまでの探査経験に基づいて改善点のリストアップとその方策の検討が進んだ。一部必要な部品類の調達ができず次年度に繰り越したものもあるが,機体開発には着手することができた。 海外研究協力者とはメールを通じて情報交換ができている。また,新たに研究グループに参画した若手研究者とは調査対象地域の研究上及びロジスティック上の情報共有が進み,分担に従って既存データ・試料の解析を開始することができた。若手研究者を交えた国際共同研究の推進と言う面では,海外研究者との対面での研究交流ができていないことは残念であるが,おおむね順調に本課題は進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の無人飛行機による探査に向けて準備を進めていく。無人小型飛行機の関連では,新たに無人飛行機の技術者であるピーラーワタナシャート・ノン氏を研究協力者に加えて,研究分担者・東野が研究協力者(角屋氏・ノン氏)と共に,機体と制御システムを構築し,試験飛行をしながら調整を行い,探査に最適な機体の開発を進める。2021年度内に石川・東野がエチオピアに一週間程度渡航し,海外研究協力者のAmeha A. Muluneh助教(エチオピアAddis Ababa大学),Tesfaye Kidane教授(南ア・KwaZulu Nata l大学)と無人飛行機による調査の打合せと必要物資確保の算段をする。併せてエチオピア政府の関係機関とアジスアベバ大学にこれまで同様の調査協力を依頼する。新型コロナウィルスの感染状況により渡航が難しい場合は,これら海外関係者とのリモートによる打合せの機会をもつようにする。 研究分担者の加藤・吉村・望月・加々島は各自の分担に従って,既存データ・試料の解析,調査地域の研究情報の収集・検討を進める。本課題の目的遂行のために年代学的情報が必要になったので,新たに地球年代学を専門とする長谷部徳子教授(金沢大学)を研究協力者に加え,TL法での年代推定の可能性を検討する。 研究情報の共有と議論のために,月1回程度の定期的なリモートによる研究会を行う。研究関連の情報は外部サーバーを用いて共有する。2022年1~3月の期間に上記2名の海外研究協力者を日本に一週間程度招聘し,その招聘期間に研究集会を行い,研究進捗状況の確認,データ・試料の解析結果の議論,現地調査及び研究計画の具体的検討を行う。新型コロナウィルスの感染状況により海外研究者の招聘が困難な場合はリモートでの参加として集会は行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究集会がリモート開催になったので,旅費の支出が抑えられた。次年度の研究打合せ・研究集会の旅費として使用する。 無人飛行機の開発に関する部品類の購入のために物品費(消耗品費)を計上していたが,年度内の納入が難しい物品があり,今年度の購入を見送った。次年度の無人飛行機関係の物品費として使用する。
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