研究課題/領域番号 |
20KK0076
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
石川 尚人 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (30202964)
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研究分担者 |
加藤 千恵 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00828478)
東野 伸一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (40243901)
吉村 令慧 京都大学, 防災研究所, 教授 (50346061)
望月 伸竜 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60422549)
加々島 慎一 山形大学, 理学部, 准教授 (70361243)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | プレート拡大境界 / 海洋底拡大 / アファール / 無人飛行機 / 磁気異常 / 磁化構造 / 比抵抗構造 |
研究実績の概要 |
2022年度は11月末から12月中旬の期間に無人飛行機による航空磁気探査を実施するために,7月に石川・東野がエチオピアに渡航し,海外研究協力者とともに事前準備と現地状況の把握をすることを計画した。しかし,新型コロナウィルスの影響で7月の渡航ができず,今年度の航空磁気探査の実施を断念した。但し,11/20-12/6に探査対象地域のSemera周辺域での地質調査に参加し,現地状況の把握を行い,次年度の航空磁気探査の実施のために対応すべき事項,無人機の離発着場の候補地の確認ができた。 遠隔(3回)・対面(1回)の研究集会を行って研究情報を共有しつつ,無人飛行機の整備,既存の探査データ・岩石試料の解析を分担に従って進めた。無人機の飛行性能の向上のためにカナードの低翼化,降着装置の強化等を行い,探査への投入の目処がたった。Tendaho GrabenのMT探査データに基づき2次元比抵抗構造逆解析を行い,12km以深に3つの低比抵抗領域があり,それぞれから浅部に伸びる低比抵抗構造があることがわかった。磁気インバージョン法による磁気探査データの解析から2次元磁化構造モデルを構築し,Graben中部域には,地下2.5km以深に中央の幅10kmの正帯磁域の両側に幅5kmの弱帯磁域を挟んで逆帯磁域が認められ,2.5km以浅ではそれらの帯磁域から上方にのびる岩脈状の磁化構造が認められた。地表溶岩流の古地磁気解析では,正磁極期を示す溶岩流がGraben中央の幅40kmを占め,地下の正帯磁の磁化構造の幅とは食い違うこと,正・逆磁極期の境界付近の溶岩流は古地磁気強度が弱く,地磁気極性の移行期の地磁気状態を反映している可能性があることが示された。岩石学的解析では過去約60万年間の溶岩流には地殻の混入度合いの差を反映している可能性がある化学組成が異なる2種があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無人飛行機の整備,既存の探査データ・岩石試料の解析は進んだものの,新型コロナウィルスの影響により無人飛行機による航空磁気探査が実施できず,当初の研究目的の遂行に向けての進捗は遅れている。 今年度は11-12月に航空磁気探査と地表溶岩流の試料採取を実施するために,7月に無人飛行機の使用を管轄しているエチオピア政府機関との折衝,必要物資の確保等の事前準備のための渡航を計画した。しかし,エチオピアの感染症危険レベルが3のまま7月まで維持されたために渡航することができず, 11-12月の航空磁気探査を行う現地調査を断念した。ただし,現地状況の把握のための渡航を11/20-12/6にすることができ,調査対象地域とそこへの移動経路の状況や無人機の離発着場の候補地の情報が得られた。 無人飛行機の飛行性能を高めるための改良が進み,現地使用の目処がたった。新たに航空磁気探査・磁気異常解析の専門家である京大・宇津木氏を研究協力者に迎え,既存の磁気探査データの磁気インバージョン法による解析を行い,2次元地下磁化構造モデルを構築した。地下2.5km以深にはGraben中央に幅10kmの正帯磁域とその両側に幅5kmの弱帯磁域を挟んで逆帯磁域があること,2.5km以浅ではそれぞれの帯磁域から伸びる岩脈状の磁化構造があることがわかった。MT探査データに基づき2次元比抵抗構造逆解析を行い,12km以深に3つの低比抵抗領域があり,それらから浅部に伸びる低比抵抗構造があることが認められた。地表溶岩流の古地磁気解析・岩石学的解析においても新たな知見・示唆が得られており,Tendaho Grabenの形成過程の解明に向けた研究は進んでいる。 海外研究協力者の日本招聘はできなかったものの,遠隔(3回)・対面(1回)の研究集会を行い,研究計画の協議,研究成果の情報共有とその議論,研究者間の交流は進めることはできている。
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今後の研究の推進方策 |
アファール地域の3地域,Dubbahu-Manda Hararo Rift,Tendaho Graben,Erta- Ale Rift,を研究対象とする当初計画であったが,最終年度の今年度はTendaho GrabenとDubbahu-Manda Hararo Riftでの無人飛行機による面的な航空磁気探査の実施に注力する。 11月に航空磁気探査を実施する。17日間の渡航期間を設け,探査実施日5日を確保する。予備も含めて無人機は2機持ち込む。優先順位に従い対象地域を分割し,目的達成ために必要最低限のデータが得られるように探査計画を組む。調査には石川,東野,吉村,研究協力者の角屋守・まこと両氏,海外研究協力者のAmeha助教,Tesfaye教授が参加する。事前準備のため,7月末に石川,東野がエチオピアに渡航し,海外研究協力者とともに必要物資の確保,無人機を管轄するエチオピア政府機関との相談等を行う。国内では無人機の試験飛行を繰り返し行い,機体と磁気探査システムの調整を進める。 分担に従って,既存の探査データ・岩石試料の解析を各研究機関で進める。京大・宇津木氏を新たに研究分担者に加え,今年度の探査データを含めての解析を行い,磁気異常マップ,3次元地下磁化構造モデルを構築する。他の解析結果と統合し,Dubbahu-Manda Hararo Rift /Tendaho Grabenの形成過程の解明を目指す。 遠隔での研究集会を定期的に行い,年度末には海外研究協力者を招聘し,対面での研究集会を行う。調査で渡航した際にアジスアベベバ大学において研究内容・成果を紹介する機会を持つことを検討する。これらの機会を通じて研究の着実な遂行を図るとともに,研究交流を行い,国際共同研究体制の深化を図る。今年度の探査の実施状況によって,研究目的達成のために次年度への研究期間の延長も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で7月の調査準備のためのエチオピアへの渡航,11-12月に計画していたエチオピアでの無人飛行機による航空磁気探査を中止したので,それらに関わる旅費の使用がなくなった。また,年度末に予定していた海外研究協力者の日本招聘が先方の都合と合わず次年度へと延期となり,それに係る旅費の使用がなくなった。 今年度の残額は来年度の研究計画の実施において使用し, 7月の事前準備のためのエチオピアへの旅費,11月の無人飛行機による航空磁気探査のための旅費,機材の運送費,レンタカーの使用に係る経費,また,外国人研究協力者の日本招聘に係る旅費に使用する。
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