研究課題/領域番号 |
20KK0077
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
橋本 善孝 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (40346698)
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研究分担者 |
濱田 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 副主任研究員 (80736091)
KARS MYRIAM 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (90725706)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 付加体 / 断層 / スロー地震 / 巨大地震 |
研究実績の概要 |
地球物理学の分野では、スロー地震と巨大地震の相互作用を理解しようとする研究が進んでいる。地質学的物質科学では、変形の多様性、定性的なすべり速度、空間的な相互関係などが明らかとなっているが、地球物理学的な観測と結びつけることが必ずしもできていない。そこで本研究では、以下の2つを目的とする。一つは、海洋付加体、陸上付加体の多様な断層を対象に、過去の応力、歪、すべり速度等の物理量を物質科学的に徹底的に定量し、地球物理観測から得られた物理量と対比することで、両者を結びつけることである。2つ目は、これらの変形構造の空間的な関係を物理量とともに明らかにし、異なる速度の変形の空間的相互作用を明らかにすることである。 計画第2年度も、国内で可能な陸上付加体を対象とした研究を進めた。特に高知県白亜系四万十帯横波メランジュを対象に、1)被熱分布から断層滑り条件の制約、及び2)帯磁率異方性を用いた歪みの断層周辺の空間分布の検討を行なった。 1)では断層中心付近の被熱分布と破砕帯外の被熱分布の両脇から断層発熱パターンを制約し、幅約20cmの破砕帯がスロー地震としてすべったことを明らかにした。この破砕帯内に厚さ約1mmの巨大地震断層が共存しており、スロー地震と巨大地震が同じ断層帯で起こっていることを示している。さらに被熱履歴を明らかにするために、熱消磁処理した残留磁化測定を行う予定である。 2)の帯磁率異方性を用いて断層周辺のひずみ分布を検討したところ、断層から遠方での一軸圧縮のひずみが、断層帯に近づくについれて剪断ひずみが重複し、平面ひずみ的になっていることが明らかとなった。また、剪断ひずみの重複が少ない時は延性的なひずみで、より重複が大きくなると脆性的破壊に伴って、ひずみ軸がバラつくことが明らかとなった。これらの変形機構の違いをひずみの定量とともに明らかにしたことは大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第2年度も新型コロナの影響で外国へ訪問することが叶わなかった。一方で陸上付加体での研究は考えていた以上の良い結果が出ており、この結果を元に今後の研究をより効果的に進めることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は実際に外国に赴き、試料の準備方法の打ち合わせを行い、実際のひずみの微視的定量的測定の実現を目指す。昨年度までに得られた成果を元付いた試料の提供が可能となり、よりターゲットを絞った分析が可能となった。また、高知コアセンターに導入された微小領域磁力計で磁性鉱物と変形構造の関係の視覚化が可能となった。これを用いることで、帯磁率異方性の得られた試料の変形機構、変形構造及び磁性鉱物との関係を観察して、どのような変形がどのようなひずみにつながっているのかを明らかにしていきたい。同時に、ステップ熱消磁処理後の磁化測定による熱履歴の検討も開始した。これまで得られている熱履歴のクロスチェックとして用いられるだけでなく、磁性鉱物の種類やサイズ、変性なども明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外旅費が使用できなかったため。今年度は海外旅費を使用していく予定。
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