研究課題/領域番号 |
20KK0078
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
氏家 恒太郎 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40359188)
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研究分担者 |
纐纈 佑衣 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (20726385)
西山 直毅 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (30746334)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 交代変成作用 / 反応帯 / 炭質物ラマン温度計 / 石英ラマン圧力計 |
研究実績の概要 |
4月下旬にオンラインで開催された欧州地球科学連合において、海外共同研究者のAke Fagereng, Francesca Meneghini両博士と研究代表者の氏家がコンビーナとなりセッション「Subduction zones evolution and slip styles: advances from tectonics, metamorphism and rheology」を開催した。互いの研究の進捗報告、情報交換のみならず、セッション参加者らと活発な議論が展開された。
2020年度に引き続き新型コロナの影響で海外渡航が不可能であったため、中部地域・三波川変成岩と石垣島・トムル変成岩を対象に研究を進めた。中部地域・三波川変成岩はほとんどが低変成度部の緑泥石帯であり、有効な熱力学温度圧力計が存在しないため、炭質物ラマン温度計と石英ラマン圧力計を組み合わせたピーク温度圧力条件の制約を行った。その結果、最高温度圧力条件は、360から390℃、0.76から0.93 GPaと制約された。他の地域の三波川変成岩と比較すると、圧力に対してピーク温度が低いため、海嶺接近による加熱の影響を受けていない領域であると推定された。石垣島・トムル変成岩では炭質物ラマン温度計から約450℃の最高到達温度が得られ、塩基性片岩中の鉱物組み合わせからepidote-blueschist faciesの変成作用を被ったことが明らかとなった。また、泥質片岩と塩基性片岩を対象にシュードセクション法を適用し、最高到達温度・圧力条件下では緑泥石の分解に伴う脱水が起こり、脆性破壊に伴う石英脈形成に深く関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外共同研究者と開催した欧州地球科学連合におけるセッションが大変盛況で、今後の研究の推進に向けて有意義なものとなった。また、2021年度に長崎・西彼杵変成岩で得られた研究成果を2編の論文としてまとめ、国際学術誌に投稿し、現在査読中である。
2020年度に得られた四国・三波川変成岩の研究成果をベースとして、より広域的に低変成度部が露出している中部地域・三波川変成岩の調査・分析を進めた結果、同地域は四国よりもピーク温度が低く、コルシカ島と同様に冷たくて古いプレートが露出している可能性が示唆された。今後、コルシカ島の変成岩が入手できた場合は、中部三波川地域での成果を生かして、効率よく分析が進められることが期待出来る。2021年度は石垣島・トムル変成岩の研究に新たに着手し、シュードセクション法を適用することで、変成作用による脱水が深部スロー地震発生域で起こることが示された。この解析手法は、今後コルシカ島の変成岩を対象に、冷たくて古いプレートが沈み込む際に変成作用に伴う脱水が生じ、スロー地震を引き起こすか検証する際に活用することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度にピーク温度圧力条件を明らかにした中部地域・三波川帯の結晶片岩を対象に、後方散乱電子回折を用いた石英の結晶方位ファブリック解析を行い、変形履歴について検証を行う。更に、同地域には超塩基性岩体も露出しており、深部スロー地震が発生する沈み込むプレートとマントルとの境界に対応すると考えられることから、露頭や薄片観察を通じてスロー地震に関連する痕跡を探し出す。石垣島トムル変成岩における石英脈と泥質片岩の化学分析を行い、泥質片岩から石英脈へのシリカの拡散が起こっていたかを評価し、石英脈の形成メカニズムを明らかにする。更に、同様の解析を九州東部四万十付加体・槙峰メランジュの石英脈に対しても適用する。両者の結果を比較・統合し、深部スロー地震発生域で重要と考えられているシリカの移動・沈殿についての地質学的描像を得ることを目指す。
海外渡航が可能となり次第フランス・コルシカ島に渡航し、海外共同研究者と地質調査・試料採取を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で原則海外渡航が禁止され、フランス・コルシカ島で予定していた地質調査・岩石試料採取が出来なかったため、次年度使用額が発生した。海外渡航が可能となり次第コルシカ島に渡航し、地質調査・試料採取を行う。
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