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2020 年度 実施状況報告書

EBSDの新展開によって拓く断層岩の微細組織学

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0079
研究機関東京大学

研究代表者

WALLIS R・Simon  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (30263065)

研究分担者 瀬戸 雄介  神戸大学, 理学研究科, 講師 (10399818)
永冶 方敬  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10795222)
吉田 健太  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (80759910)
大柳 良介  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 特別研究員(PD) (90835729)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2024-03-31
キーワードEBSD / Hough Indexing / Dictionary Indexing / 断層岩の微細組織 / 蛇紋石
研究実績の概要

今年度はプロジェクトの初年度であり、すでに実績のあるアンチゴライトの結晶方位測定に着目した。また、コロナ禍の影響で実験室の訪問は実現できなかったが、emailやZoomなどを用いて複数回海外共同研究者のCarnegie Mellon大のMarc DeGraef氏と話し合った。Wallis代表者と永冶分担者が築いてきた独自の研磨方法を用いて、主としてAtgからなる蛇紋岩の研磨薄片を用意し、菊池パターンを保存しながらEBSD解析を行なった。約1TBのデータ量になったが、共同研究者のDeGraef氏に共有するために、外付けのハードディスクに保存し、アメリカに郵送した。また、測定結果と比較するために必要な理想的な菊池パターンを計算するために適切なAtg結晶構造データについて議論を行なった。一つの大きな不確定様子として「m-値」で表されるAtgの湾曲した結晶構造の波長が挙げられる。通常透過型電子顕微鏡観(TEM)察による画像の解析によって確認する必要がある。また、TEM測定は狭い領域しか反映せず、サンプル中の「m-値」の分布や不均質について情報がほとんど報告されていない。今回は「m-値」を仮定し、Dictionary Indexing (DI)のアプローチによって解析を進めた。DIの解析により通常のHough Space Indexing (HI)で得られた画像と大きく矛盾しない画像を得られた。またHI画像と異なって空白域がなくAtg結晶粒界がより明瞭であり、組織解析に合致したものであることを確認した。一方、一部のAtg結晶においては、HIで認識できなかった双晶関係を可視化した。また、一部の結晶についてHI画像とDI画像が異なる方位を示す。これらの違いの原因についてさらに追求する必要があり、透過型電子顕微鏡による観察を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プロジェクトを実施する上で東京大学に設置してある電子後方散乱回折(EBSD)装置の更新と機能拡張が必要不可欠であった。2020年度では、EBSD装置のソフトおよび大量のデータ取得と解析に適した制御コンピュータを更新した。今、EBSD装置はラージエリアマッピングできるように現有のシステムのアップグレードを行い、数mm^2までの分析が問題なくできることを確認した。新しい機能を活かして、アンチゴライトを主とした蛇紋岩の結晶方位を測定した。また、海外共同研究者と協力しHough IndexingのみならずDictionary Indexingによる方位マッピングを実施した。また、解析の改良点に関する検討を開始した。これらの作業は2020年度で予定している内容と一致し、研究はほぼ計画通り進んでいると考える。コロナ禍の影響で研究室訪問を実施できなかったが、オンラインツールを用いて海外共同研究者と効率の良い連携はできていると考える。

今後の研究の推進方策

今後の計画として次のことを予定している。
分析条件やデータ処理に関する条件を検討し、アンチゴライトの方位解析をさらに改良し、Hough Indexingによる結果とDictionary Indexingによる結果の違いについてどちらが正しいかを検討する必要がある。特にHough Indexingで示されていない双晶関係の信憑性を確認する必要がある。結晶方位を確実に確認するために透過型電子顕微鏡による観察と構造解析を行う予定である。解析に合致した試料領域の測定を行うために、FIBによる試料作成も予定している。アンチゴライトのDictionary Indexingによる最適な解析方法が確定したら得られる画像の使い道についてもも追求する予定である。本研究の中心的な課題である断層岩の組織解析を行うために粒界の可視化が重要である。その粒界の可視化によって粒子の大きさ・
形・方位を定量的に決定できる。また、アンチゴライトや他の断層岩の構成鉱物として重要であるフィロ珪酸塩鉱物解析が不規則で複雑な結晶構造を示すことが多い。ただし、一つの岩石試料の中で結晶がどの程度不均質があるか、またその分布に関する情報はかなり限られている。Dictionary Indexing では、結晶構造を用いて理想的な菊池パターンを計算したものを実際に測定したパターンと比較してもっともよく合う方位を探していくプロセスを含む。理想と測定結果の間の微小の方位ずれを活かして結晶構造の不均質を可視化できる可能性について追求する予定。次年度以降、アンチゴライト以外のフィロ珪酸塩鉱物についても同様な解析を行う予定である。ターゲットとしてtalcやchrysotileや粘土鉱物を考えている。

次年度使用額が生じた理由

一番大きな理由はやはりコロナ禍による移動制限にある。特に海外渡航が困難な時期が長くついづいてきた。海外共同研究者とのコミュニケーションはオンラインである程度対応できたものの、実際に研究室を訪問し、具体的な実験方法について話し合う必要がある。対応として、2021年度に渡航回数、期間を増やす必要予定である。また、分担者1名は所属の変更を予定し、新しく購入する予定の設備を新しい研究室整備と一緒に行うことで作業能率向上を実施できる見込みために、予算を2021年度に使うこととした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] New approach to EBSD analysis(of ‘difficult’ geological materials)2020

    • 著者名/発表者名
      S. R. Wallis, T. Nagaya, Y. Seto, K. Yoshida, R. Oyanagi
    • 学会等名
      変成岩などシンポジウム(online)

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公開日: 2021-12-27  

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